走るホテル

今日はブエノスアイレスを離れる日。
夕方のバスに乗るため、
それまでの時間を利用して「カミニート」を再訪した。

 

カラフルな街

カミニートとは、ボカ地区にある長さ100mほどの小道で、
色彩溢れる家々が並んでいる。
前回訪れたときはあいにくの曇り空だったので
今日みたいな青空を待ち望んでいた。

カニミートでは、
オープンカフェスタイルのレストランが軒を連ね、
軽快なリズムに乗せてタンゴショーが行われている。
そう、ここはタンゴ発祥の地。
食事をしながらタンゴを楽しむわけだが、
アルゼンチンは気前のいい国なので、
立ち見なら無料で見学できてしまう。

急ぎ足の旅の中で、こうやって2度訪れる場所は特別だ。
最近じゃ、心が騒ぐような絶景よりも、
心休まる風景を探している。
知らない街の日常にこっそりと溶け込める場所。
時間を楽しむ感覚が心地いい。

 

くるくると通りを2周し、
運河沿いのベンチに腰掛けて街行く人を眺めた。
風に乗ったタンゴのリズムが耳をくすぐっていく。
南米の旅もようやく軌道に乗った感がある。
忙しさの中で、こうやって心泳がす時間が持ててるのだから。

 

次はイグアス

バスに乗り宿に戻った。
まとめておいた荷物を担ぎ、皆に別れを告げる。
毎日がハローグッバイ。
感傷に浸る余裕もなく、時は流れていく。

『上野山荘別館』はとても居心地のいい日本人宿で、
毎晩遅くまで共語り明かし、思い出を綴った。
次なる目的地は「プエルト・イグアス」。
アルゼンチン最後のハイライト、
「イグアスの滝」を目指す。

レティーロのバスターミナルには、
200以上のバス会社が軒を連ねていて
国内はもちろん、ほぼすべての周辺国にアクセスができる。
迷子にならないよう、チケットのプラットホーム番号を確認し、
広い構内を少し早足で歩いた。

 

最強の長距離バス

バスは“カマ”と呼ばれるデラックスバスで、
飛行機で言えばビジネスクラス。
シートの広さは今までのバスの2倍近くあるだろう。
リクライニングもほぼ水平まで倒れるし、
毛布に枕、そしてフリードリンクでワインも飲める。
食事も2回サーブされ、
とても紳士なボーイさんがウインクしながら運んでくる。

適度なエアコン、静かなエンジン、揺れの少ない車体。
こいつは走るホテルだ!

プエルト・イグアスまでの20時間、
ほとんど夢の中にいた…。
いつもならバス移動は体力と気力を消耗するのに、
こんなバスなら毎日でもOKだ。

目が覚めると真夜中だった。
無性に喉が渇いたので、
勝手に冷蔵庫からスプライトを1本拝借し、
ガブガブと一気に飲み干した。

あぁ幸せ♪ 次もカマにしよう、
そう呟きながら再び夢の中へ帰っていった。

 

旅のカケラ/slideshow

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