対岸の国へ

ブエノスアイレスの港からフェリーに乗り、
「ウルグアイ」のコロニアに向かった。
『BUQUEBUS』社の大型フェリーを利用し、
運賃は189ペソ(約5500円)。

 

ウルグアイへの大型フェリー

フェリーターミナル内にイミグレーションがあり、
出入国のスタンプは簡単に押してもらえた。
フェリーは定刻どおりに出港し、
赤みがかかったラ・プラタ川を滑るように進んでいく。

一番驚いたのはフェリーの船内で、
全面ガラス張りで吹き抜けのラウンジをはじめ、
免税店やゲームコーナー、展望デッキと
至れり尽くせりの豪華な内装だった。
窓際のテーブルを陣取り、
パソコンをいじりながら豪華な船旅を楽しんだ。

出港して1時間ほど経つと、ラウンジのど真ん中で
フォルクローレショーがはじまった。
アルゼンチンの音楽といえば、タンゴと並んでフォルクローレが人気。
小気味よくギターを掻き鳴らしながら、高らかに歌い上げる。
実はフォルクローレは失恋の歌らしいが、
歌い手も観客も楽しそうに大合唱だった。

 

港の古都コロニア

3時間を船旅を終えると、そこは38ヶ国目のウルグアイ。
小さな港町であるコロニアに降り立った。

静かな町だったが、アルゼンチンよりも暑さが厳しかった…。
宿まではタクシーを使おうと思い、
運転手に住所を見せると、
「歩いていけるよ」と、丁寧に道案内してくれた。
インドだったら嘘をついてまで客を乗せるのに親切だなぁ。
こんな小さなことがきっかけでその国が好きになる。

ウルグアイの国名はウルグアイ川にちなんで命名され、
その語源はグアラニー語で「鳥の住む川」を意味しているそうだ。
国土は日本の約半分で、人口は約350万人の小国。
今回はウルグアイ唯一世界遺産に登録されている
「コロニア」の旧市街を目指した。

 

自然と歴史が調和した旧市街

この町ははじめ、ポルトガルの貿易港として栄えた。
ちなみに首都モンテビデオは、そのポルトガル勢力に対抗するため、
スペインにより設立されたものだそうだ。
その後、スペインの支配下に置かれるものの
今でもしっかりとポルトガル時代の名残が息づいていた。
地形に合わせて不規則に通りが巡らされているのが特徴で、、
スペインが得意とする、直交する幅広の「カジェス」とは
対照的なのが見て取れた。

石畳の道の続く、古くからの静かな町並み。
自然と歴史とが美しく調和していて、
なにかの物語に迷い込んだような錯覚を起こす。
コツコツと足音を響かせながら、
潮の香りがする路地を歩いた。

町のシンボルと言うべき灯台にも登った。
細い螺旋階段は、人ひとり通るのがやっと。
上から降りてくる人を身体を摺り寄せながら交わし
てっぺんにたどり着いた。
風がよく抜けて、噴出した汗を拭ってくれた。

 

 

大きく伸びた影

この旅で好きな景色が2つある。
それは遺跡と旧市街。
昨日まで滞在していたパタゴニアのような
大自然が作り出した絶景も素晴らしいのだが、
どこかに人の手が加わったもの好きなようだ。
情緒というか、趣というか、
ワインのように深い味わいがあって
心の琴線をくすぐる。

この旧市街はいたるところのベンチがあり、
「よう来なすった、どうぞごゆっくり」
と、語りかけているようだ。
白いベンチに腰掛け、本を読み、手紙を書く。
風に心を泳がせながら、
穏やかに過ぎていく時間を楽しんだ。

 

地図が書けるくらい旧市街を練り歩き、
オレンジに染まった古都を後にした。
小さな国の小さな町で、
自分の影が大きく伸びていた。

 

旅のカケラ/slideshow

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