アキタビ’10(フィリピン編)#8 逃亡者

昨夜、ふたり組のおばちゃんと知り合った。
フレンドリーで、日本語も堪能。
明らかに「詐欺」だろうと思ったが、
どんな嘘で騙すのかを見たいと思い、
しばらく調子を合わせておいた。

「とても大きなショッピングセンターがあるから
そこへ行こう。夕食はその近くにある私の家でどう?」

そう繰り返し、執拗に誘われた。
詐欺だとわかっていたので
このままついて行っても面白そうだったが
疲れていたので「明日ね」と、
適当な返事をして煙に巻いた。

「じゃあ、あなたのホテルまで迎えに行くから」
と、約束をとりつけられたが、
ここでも「はい、そうしよう」と合わせておいた。

 

最後の街歩き

そして、翌朝。
本当に来たら面倒なので
早めにホテルをチェックアウトし、
別のホテルに移った。
もともと最終日は違うホテルにしようと思っていたので
ここまでは予定通りだった。

ホテルを移ると最後の観光に出かけた。
首都メトロマニラの一角にある、
スペイン統治時代に中心地となっていたイントラムロスである。
周囲をぐるりと城壁が囲む城塞都市で、
スペイン人と中国人の混血のメスチソのみが住むことができた場所。
石畳の道と古い教会、情緒とロマンに胸が躍った。

 

イントラムロス

イントラムロスの北側に位置するマニラ大聖堂。
1571年に創建されたフィリピン最初の大聖堂である。


4500本のパイプを持つパイプオルガンや
ステンドグラスが見事で、
今にも讃美歌が聞こえてきそうな
荘厳な雰囲気が漂っていた。

つづいて、サンチャゴ要塞。
かつて最も重要な守備の要として機能し、
第二次世界大戦中、日本軍の占領下で
多くの人が命を落とした場所でもある。

史跡を巡り、写真に収めていると
ふいに後ろから声をかけられた。

「カズ、今朝迎えに行ったのよ」

げっ、昨日のおばちゃんたちだ…。
こんなところでまさかの遭遇。
これは、面倒なことになった。

(つづく)

 

旅のカケラ/slideshow

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