アキタビ ’22(インドネシア編) ♯07 Birthday

ウブドの朝はいつも雨が降る。
シトシトと、生い茂る木々を濡らし、
緑をより鮮やかにしてくれる。
その傍では蛙たちが嬉しそうに喉を鳴らしていた。

日本の梅雨に似たようなどんよりと重い空。
でも夏の匂いがして、この感じがとても好きだ。

 

朝の美術館

朝食を終えると、フロントに送迎をお願いした。
ここ「ザ スング リゾート&スパ」は、
市内なら何度でも無料で送迎をしてくれる。

行先は「ネカ美術館」。
著名な絵画コレクターのネカ氏が建てた美術館である。
開館の9時ちょうどに訪れたので一番乗りだった。

テーマ別の展示された6つの棟で構成されていて、
バリ絵画の原点から歴史を辿ることができる。
古典的技法から現代画風まで、
様々な作風とバリ島の歴史をゆっくりと鑑賞した。

2時間ほどかけて6つの棟を巡ったが
ずっと貸し切り状態だったので
ベンチで休んだり、思い思いに写真を撮ったりと、
のんびりと楽しめた。
朝の清々しい空気の中で、芸術に触れるのは
とても気持ちがいいものだった。

 

 

本日のオーガニックランチ

日本でガイドブックをめくっていると、
やたらとオーガニックなカフェやレストランが載っていた。
バリは欧米人に人気のリゾート地で、
特にオーガニックカフード、ローフードが好むようだ。

ここ「アルケミー」も欧米人の人気のオーガニックカフェで、
事前情報どおり、ヨギーニっぽい欧米人で賑わっていた。
オーガニック野菜を使ったサラダバーがあり、
毎日15種ほどのサラダがショーケースに並んでいる。
そこから好きなものを4種と、ドレッシングが選べるので
「おすすめはどれ?」と尋ねると、
ブロッコリーを薦めてくれた。

大きなボウルになみなみと盛られたフレッシュなサラダ、
これが本日のランチ♪
美術館からの、オーガニックランチ。
いい時間の使い方、いい暮らし方だ。

 

ジャラン・ジャラン

陽が少し傾いたころ、散歩に出かけた。
名前はわからないが、
ウブドの原風景を感じる写真を見つけたので
ホテルの人に伝え、
近くまで車で送ってもらえることになった。

大通りから細い路地に入ったところで、
「ここからは車で行けないから」と言われ車を降りた。
どうやら1本道なので迷わないらしい。

坂を上り、壁に囲まれた路地を進んでいくと
あぜ道のような歩道が延びていた。
ところどころにカフェや商店があり、
民宿の看板も見つけた。
今度きたときはこういう場所に泊まってみたいものだ。

ヤシの並木道、広がる田園風景、
アヒルの群れが一列に歩いていたり、
かかしが揺れていたり。
まさしくウブドの原風景。
日本の昭和の景色にもよく似ている。

ここ、ウブドで一番好きかも。
思わぬ発見に嬉しさがこみあげてくる。
どこまでも続く一本道を歩いていこう。

「ポメグラネイト」というカフェで一休み。
ゲルのようなオープンカフェで、
果てしなく続くライステラスビューが神々しい。
座椅子に深く腰掛けて、
西日で少し黄金色になりかけた景色を眺めていた。

 

1つの町でこれほど長く滞在したのは久しぶりだ。
それでも毎日が刺激的で、そして穏やかだ。
旅をしているというより、暮らしている感覚。

 

魂が震えるケチャ

本日の締めくくりは「ケチャ」。
昨夜はチケットを買って席についたものの、
まさかのレゴンだったために無理言って取り替えてもらった。

「神々の棲む島」と称されるバリには、
たくさんの伝統芸能、文化が根付いていて、
なかでもひと際異彩を放つのがケチャである。

バロン、レゴンと並んで、バリ島の三大舞踊のひとつ。
古くから「悪魔を鎮める儀式」を行う習慣があり、
その儀式のひとつを起源にしているとか。
ケチャが初めて上演されたのは、
ウブドの南東にあるブドゥル村の村民たちだったと伝わっていて、
古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」を基にしているそうだ。

上半身裸の男性たちが
チャッ、チャッ、チャッ、チャッという合唱とともに
円陣を組んで踊りはじめた。その数は100人ほどいそうだ。
夜の寺院に響き渡るリズミカルな合唱と、
ダイナミックに踊る光景は迫力満点で、神秘的だ。

そういえば開演前は雨が降っていたが、
直前に雨があがり、
月明かりと松明に照らされながら踊りが始まった。
バリの神々はニクい演出をしてくれる。

旅は終幕に向けて加速していく。
これは抗いようのない宿命で、
旅の密度が濃いほど、そのスピードは速く感じる。
ケチャの余韻のなかで、
今回も楽しかった旅を反芻し、
明日の行先にも心躍らせていた。

旅のカケラ/slideshow

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