アキタビ’10(フィリピン編)#2 ロード・アイ・ミス・ユー

トントン、トントン。
膝を叩かれ目を覚ました。
腕時計を見る。午前4時。
早すぎる到着に困惑しながらも
ここがどこだかを整理する。

 

バギオ

「バギオ」

ドラクエの呪文のような街。
標高1500mだけあって少し肌寒い。
この街は別名「夏の首都」と呼ばれていて
マニラ政府が夏季の間移動してくるのだとか。
午前4時の街はすでに動き始めていた。

地図を見るもここがどこだか定かではない。
宿の客引きに場所を聞いてみると
郊外のバスターミナルで、ここから次に目指す
「バナウェ」行きのバスはないという。

しかしフィリピン人は優しいし大人しい。
しつこく宿を勧めてこないし、
親切に応対してくれる。
彼から「KMS」というバス会社を教えてもらい
歩き出すも、ほんの5分で断念。
暗すぎるし、まったく方向に自信がない。
さきほどの場所に戻り、別の人に声をかける。

「じゃあ俺の車で行くか?」
白タクかぁ…少し戸惑うも
たったの10ペソ(20円)でいいと言うし
乗ってみるか。

 

バスターミナル

10分後、KMSの小さなバスターミナルに到着した。
オフィスは閉まっていたがベンチに客らしき人がいたので
尋ねてみると、出発は午前8時だという。
あと3時間半。長いな…。

することがないので街を散策。
薄暗い路地に一瞬たじろぐも
「ハロー」と声をかけると笑顔が返ってくる。
やさしい人とやさしい街。
フィリピン、いいところだぜ!

一軒のレストランに入り、
ソーセージエッグを注文。
30ペソ(約60円)で3時間近く粘るも
嫌な顔ひとつしない。

 

行き先はバナウェ

再びバスターミナル。
オフィスに向かおうとすると
さっきのおじさんが「こっち、こっち」と手招きする。
荷物を車内に運んでくれ、
チケットの買い方を教えてくれた。

■バギオ→バナウェ 所要時間9時間/450ペソ(約900円)

席は一番前の窓側。
通路側の席には荷物を置かせてくれた。
窓を大きく開け、顔を半分出しながら
カメラを構える。
ときどき運転手と話をし
大きなカーブに身体をよじった。
トロトロと山道を走るバス、
時間が全く気にならなくなった。

まどろみに似たこのやすらぐ感じ。
なんと表現したらいいのかわからないが
脳はどっしりと落ち着き、
心はざわざわと昂ぶっている。
流れる景色に瞳を輝かせ、
あの“世界一周”をしたときの自信が甦る。
これからもずっと、異国のバスに揺られるたびに
この気持ちを思い出せるのだろう。

バスの中で現地の人と仲良くなった。
フィリピンの人たちはホントに英語が上手く
しかもゆっくりと話してくれる。
くったくなく笑い、そしてやさしい。
休憩所で昼食を一緒に摂り、
車内ではおやつやバナナをもらった。
お互いのiPhoneを交換し
音楽を聴きながら一緒に笑う。

日が傾きかけた午後5時。
「バナウェ」という小さな町に着いた。
メインストリートは100mほどしかなく
切り立った崖に町があった。
なんだかアフリカにいるような錯覚に陥った。
こんな感じの町がいくつもあったっけ。

宿は「ステアウェイ・ロッジ」に決めた。
シングルルームで1泊200ペソ(約400円)。
水シャワーなのが難点だが、久々だしがんばろう。

フィリピンは喧騒と緊張をイメージしていたのだが
やさしさと穏やかさに包まれている。
そしてあの頃の“自信”も取り戻した。
何かをはじめるとき、旅はそっと背中を押してくれる。
「がんばろう」
日本に帰るのが早くも楽しみになってきた。

旅のカケラ/slideshow

 

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