3泊4日のサファリツアーも
いよいよ3日目を迎えた。
午前6時、肌寒さを感じながら
テントの中で目を覚ます。
もぞもそと寝袋から這い出て
シャワーをひねるも、冷たい水しか出なかった。
冷たい水で目をこじ開けて、
ゲームサファリへ出かける準備をした。
ビッグ5
ケニアには“ビッグ5”と呼ばれる動物がいる。
ライオン、ゾウ、ヒョウ、バッファロー、サイが
それにあたるだが、
「滅多に見られない」
という意味でそう呼ばれるわけではなく、
狩猟時代に最強を誇っていた
5大動物という意味だそうだ。
サファリでもこの5種類は人気が高く、
すべてを見るのは難しいとされている。
でも大丈夫!
うちのスティーブン(ドライバー兼ガイド)は
ハンターの目と嗅覚を併せ持つベテランだから。
ゾウ、サイ、バッファローはすでに見た。
ライオンも2回見たが、どちらも遠かったので
もっと近くで写真を撮りたい。
そして問題はヒョウ。
こいつはチーターと並んでかなりのレア動物である。
それからどうしても見たいのがキリン。
あんなおかしな動物がどうやって生息しているのか
興味が湧いて仕方がないもの。
春風を浴びながら
午前8時、ゲームサファリ開始。
舞台は昨日に引き続きマサイ・マラ国立公園である。
本日は快晴。
空は春の色をしていて、澄んだ水色。
そこに無数の雲が浮かんでいて
まるで美術の教科書で見た
マグリッドの絵のようだった。
気持ちいいなぁ♪
サンルーフから顔を出し、
春風を浴びながらサバンナを走る。
サワサワと草木が揺れ、
エンジン音に驚いたインパラが
跳ねて逃げ出した。
ガゼル、イボイノシシ、カンムリヅル。
親子ダチョウに、シマウマの群れ…。
見渡す限りの大草原は野生の王国だ。
シルエットを発見
キリン!!!
スティーブンが叫んだ。
もちろん自分たちには見えない。
あっち、あっち!
指差す先を睨むと、ずっと先にシルエットを発見した。
いったいどんな目をしてるのやら(笑
そういえば、双眼鏡を貸したとき
彼はこんなことを言った。
「使いにくいなコレ。
しかも俺の目のほうがずっとよく見える」
ってね(笑
おそらく彼の視力は5.0はカタイと思う。
キリンは群れでいた。
当たり前だが、ぐ~んと首が長く
ふわっ、ふわっと、浮くように移動する。
残念なことにこのサバンナには高い木が少なく、
じゃまな首を折りたたむようにして
地面の草を頬ばっていた。
そしてここにも寄り添う親子の姿があり、
なんとも微笑ましい光景だ。
念願のキリンに気分を良くし、
デジカメの画像を眺めながらニヤけていた。
その直後、スティーブンがまたホームランを放った。
百獣の王
「ライオンだ、メイビー(たぶん)」
彼は大きくハンドルを切り、
道なき草原を駆け上った。
木の茂みの前で車を止め、指差す。
サンルーフから顔を出すと
すぐ目と鼻の先にライオンの親子がいた!
その距離5m、
窓を閉めておけ!と注意が飛んだ。
雌ライオン3頭に、子どもが7頭。
仲良く昼寝をしていた。
かわいい!と、小声で歓声をあげながら
写真を撮った。
そしてすぐ横にはエサとなった
トピの死骸が無残に転がっていた…。
こんなにもかわいい顔をしておきながら
さすがは百獣の王である。
でかした、スティーブン!!
こんなにも近くでライオンが見られたんだもの。
あんたの腕はすごいよ。
この調子でビッグ5のラスト、
「レオパード(ヒョウ)」も見つけてよ。
セレンゲッティ
どんどん進み、タンザニアとの国境である
「セレンゲッティ」までやってきた。
マラ川が両国を隔てていて、この川は
ヌーの大移動で有名な場所である。
そう、200万頭というのヌーが
川を渡る映像を見たことがないだろうか?
川には巨大なワニと、無数のカバがいた。
天然の動物園は、どんな動物でも見せてくれる。
ここでランチを摂った。
ちょっと目を離した隙に、食べかけのサンドイッチを
サルに奪われてしまった…(苦笑
最後の「1」
ずっとヒョウを探し続けたが、
こいつは相当に難しいようだ。
昼間は木の上におることが多く、
どんなに目を凝らしたって見えやしない。
あたりをつけ、木の下へ車をつけるも
空振りばかりだった…。
ビッグ4だね、諦めかけた瞬間、
スティーブンがまたやった。
「レオパードだ!!」
今日一番の雄たけび、場外ホームランだ。
どこどこ?
まったく見当もつかない。
獲物を捕らえたスティーブンは、
迷いなく車を走らせた。
1本の木に近づき、「あそこだ!」
彼は声を張り上げた。
どこどこ?
目を凝らすも、まだ見つけられない。
1分くらい探したと思う。
枝と枝の影に隠れるようにヤツは息を潜めていた。
ひ、ヒョウだ☆
もう人間技じゃない!
よくぞ遠くから(しかも運転しながら)
こいつを見つけられるものだ。
冒険は終わらない
彼はすかさず携帯電話を取り出し、
仲間に連絡を入れた。
数分後、10台近いサファリカーが集まってきた。
きっと、
「マサイ・マラ4丁目にヒョウ発見!」
とでも知らせたのだろう。
どうだ、うちのドライバーはスゴイだろう!
自分のことのように鼻高々だった。
得等席で撮影を済ませ、悠々とその場を後にした。
パチパチパチ!!!!
車内は拍手で沸いた。
「じゃあビール3本なっ(笑」
スティーブンはゴキゲンだった。
8時間サバンナを駆け巡って、
切ったシャッターの回数は1000を超えた。
この旅で一番だった。
でもまだ今日の冒険は終わらなかった―。
※「サバンナの戦士」につづく
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