そしてアフリカへ…

 

タイで過ごした1週間は夢のようだった。

2度目の機内食で起こされ、
夢うつつのまま、サラダを頬張る。
パンにバターをたっぷりと塗って、
ぼんやりと遠くを見つめながら面倒臭く咀嚼した。
眠気覚ましのコーラ、炭酸が喉ではじけて心地いい。

 

海辺のカフカ

いったいどこだ、ここは?
頭上のモニターを見ると、飛行機はインド洋を飛んでいた。
現地時刻で午前4時、チオピアまではあと2時間あまりのようだ。

蜜がたっぷりかかったチーズケーキは、
タイの余韻のようにどっぷりと甘かった。
もうひと眠りしようかと思ったが、目が冴えてしまったので
読みかけの本に目を落とした。
村上春樹著『海辺のカフカ(下巻)』。
この旅で一番気に入った本である。

実際にこうやって旅をしながら、
本の中のストーリーにのめりこみ、もう1つの旅をする。
2つの旅。
この旅が自己ならば、物語は客体だ。
物語という客体に自己を投射することで、
自己をより深く認識できる。
もう1歩さがって見てみれば、この旅も客体か。
そこに自分を投射して毎日を過ごしてるんだから、
旅も物語も、さまざまなものを媒介にして
自分と対話してることになる。

 

4度目のケニア

タラップを降り、アディスアベバ(エチオピア)の空港で
約3時間のトランジット。
カフェでパソコンを開き、日記を綴って過ごした。

再び機上の人になり、3度目の機内食が運ばれてきた。
ラザニアをオーダーし、飲み物は相変わらずコーラ。
隣の人が旨そうにワインを飲んでいるのをみて、
酒が飲めないって損だな…と呟いた。
ページをめくり、もう1つの旅に没頭した。

ケニア空港でちょっとしたトラブルが待っていた。
「帰りのチケットは?」
ケニア空港の税関は意外と厳しい。
日本に帰る航空券がないと入国を認めない!
そう言い出すのだから…。
予め用意しておいたタンザニア行きのバスチケットを提示し
抗議するも、結局別室送りとなってしまった。
その後、ボスらしき人としばし押し問答をつづけたが、
なかなか首を縦に振ってはくれなかった。

「だから、南アフリカから日本に帰るんです!
まだ、日取りが決まってないから
チケットを買ってないんだってば!!」

誰か助けて~と心で悲鳴をあげながら、激しく抵抗。
ついに根負けしたのか、彼は紙になにやら一筆書いて、
「行ってよし」とそれを手渡された。
1時間もロスしたよ…
せっかく気分良く帰ってきたのにひどい仕打ちだ。

さっきの係員にその由緒正しき紙を見せると、
あっけなくビザを貼ってくれた。
これでケニアへの入国は4回目、常連だっちゅうーに!

 

顔なじみ

常連はタクシーなんか使わない。
空港出口まで歩いていくと34番のプレートを掲げた
バスが1台停まっていた。
「ナイロビ?」
一応確認してバスに乗り込む。運賃50シリング(約60円)は、
タクシーの30分の1の金額である。

「帰ってきたよ~(また)」
顔なじみのスタッフに挨拶をし、
いつもの部屋を用意してもらった。
預かってもらっていた荷物も無事。
あぁ、落ち着くなぁ~。

でも1つだけ変わっていたことがあった。
「09年より部屋代を値上げしました」
カウンターに1枚の張り紙。

『ニューケニアロッジ』は、
本年より1泊500シリング(約600円)です。
あしからず。

 

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