“果て”への旅 ~パタゴニア初日~

午前3時、まだ人もまばらな空港にいる。
昨日手に入れたチケットで、
早速パタゴニアへと向かうのだ。

 

夜明け前の空港

行き先は「エル・カラファテ」、
南部パタゴニアの主要な町の1つである。
パタゴニアとは、
マゼラン海峡に名を残すマゼランに由来していて、
グアナコの毛皮をつけた大きな足をした先住民を見て
「足、デカっ」っと言ったことがきっかけで
パタ=足、ゴン=大きい、が語源である。
(ちなみに和田アキ子もパタゴンらしい)

先日、アフリカ大陸の果て「喜望峰」を訪れたばかりだが、
今度は南米大陸の果てを目指すことにした。
まずはエル・カラファテに飛び、そこから南下して
世界最南端の町「ウシュアイア」へと向かう。

午前5時30分、定刻どおりに飛行機は離陸した。
まだ薄暗い空へと翼を広げ、雲を突き抜ける。
そして、宇宙を思わす“青”の世界が広がった。
ブエノスアイレスの街が眼下に見えて、
まるでジオラマみたいだった。
そのまま空に吸い込まれるように、眠りに堕ちた。

 

世界の果て

 

目を覚ますと機内食が運ばれていて、
ほくほくのパイが旨そうに置かれていた。
そして、窓の外に広がるパンパを目にしたとき、

「来たよ、パタゴニア…」

と、静かに鼓動が高まっていくのを感じた。
夢がまた1つ叶おうとしている。
どこまでもつづく広大な景色は、
世界の“果て”へと伸びている。

タラップを降りると、風が冷たく、気が引き締まる感じがした。
落ち着け、落ち着け。
早る心の手綱を引くように、大きく息を吐き出して
風の大地を見渡した。
「来たよ、ホントに来たよ」
夢でないことを確かめるように、心の中で何度も呟いた。

 

エル・カラファテ

エル・カラファテの街までは
シャトルバス(26ペソ ※約780円)に乗り、
移動中は身を乗り出すようにして車窓に張り付き
カメラを構えつづけた。

この街は「ペリト・モレノ氷河」や「フィッツ・ロイ」への
基点となる街で、
オシャレなカフェやアウトドアショップが建ち並んでいた。
あいにく宿は満室。
アルゼンチンに着いてから宿運が急降下しているようで、
どこも満室つづき…。
他に行くあてもなかったので、予定表と睨めっこし、
1日前倒しで「エル・チェルテン」に移動することにした。

7日間という限られた時間をフルに使うためには
決断が早いに越したことはない。
しかし、パタゴニアのバスは高い!
高い、高いと聞いてはいたが、さらに値上っていて
エル・カラファテ→エル・チャルテンは
往復130ペソ(約4000円)だった。
バスに揺られること4時間、小さな町にバスは到着した。

 

霞む、フィッツ・ロイ

エル・チャルテンには、フィッツ・ロイという
パタゴニアのシンボルとも言うべき山がある。
あのアウトドアブランド『パタゴニア』の
ロゴになった山でもある。
ダウン、フリース、カットソーと、
すべて『パタゴニア』で身を包んでいるので
ぜひこの山をひと目見ようと足を運んだわけだ。

ただ、今日は雲が多く、
フィッツ・ロイの頂は白く霞んでいた…。
パタゴニア地方は短い夏を迎えていてハイシーズンである。
そのため宿はどこも満室で、
この町でも宿探しは難航した。

「Hosteria」と書かれた看板を見つける度に
呼び鈴を鳴らし、紙を見ながら
たどたどしいスペイン語で
「部屋は空いてますか?」と尋ねて回った。
5軒目の宿で、ようやく清潔なベッドが確保でき、
値段も40ペソ(約1200円)と手頃だった。

今日は移動ばかりで疲れてしまったので、
散歩程度に町をぶらつき、
見つけたスーパーで牛肉を買って宿に戻ることにした。

アルゼンチンは牛肉が安くて旨い!
精肉コーナーで欲しい肉(部位)を指差しながら
グラム数を指定すれば、
おじさんが包丁をカチャカチャと鳴らしながら
手際よく肉をスライスして手渡してくれる。
こいつをしばらくワインに漬けておき、
塩コショウをふりながらシンプルに焼いて食べるのが好きだ。
トムとジェリーやディズニー映画で登場するような
分厚いステーキ♪ しかも毎日♪

遥かなる風の大地、パタゴニア。
今夜の肉よりも分厚い期待を胸に、
夜は更けていった。

 

旅のカケラ/slideshow

 

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