雨上がり、病み上がり

午前11時、遅れていた列車が
ようやくヴァラナシに到着した。

 

どしゃぶりのヴァラナシ

体調不良はいまだ治らず…。
ふらつきながら大きな荷物を抱え、
押し寄せる客引きと対峙した。
ただでさえ思考能力が低下しているなか、
ヴァラナシはひどい雨に見舞われている。

もう、なんでもいいよ…。

言い値に任せて、リキシャに乗り込み
客引きの宿へと向かった。

街は洪水だった…。
雨季真っ只中のヴァラナシはガンガーの水位が上がり、
いたるところで水が溢れている。
茶色い水が膝下まで襲い、
リキシャも思うように進めない状態だった。

 

死んだように眠った

残った力を振り絞って、
部屋に荷物を、腹にスープを放り込んだ。
あとはひたすら寝るだけ。
激しい雨の音をBGMに、死んだように眠った。

夢の中にはなぜかイチローが登場し、
熱心にバッティングの解説が行われた。
そして「もう引退しようかと思う」とぼやく彼。
すべてをやり遂げた彼には、
もう数字を追うだけの毎日に嫌気が差しているのだという。

これは何かの暗示だろうか?
辛い、辛いインドの旅。
旅の疲れが、「もうやめてしまえ」と
示唆しているのかのようだった。

 

ガンガーを見たい

気がつくと夜の8時をまわっていた。
部屋から出ると、「大丈夫か?」と、
宿のオーナーが心配そうに頭を撫でてくれた。
遅めの夕食を摂りながら、
病院は?薬は?と世話を焼くオーナーに
ひどく安心させられた。

普段はいい加減なインド人も、
いざというときには頼もしいものだ。

「明日、ガンガーを見たい」

そう告げると、
「それはいい!だったらうんと早起きして
舟から沐浴を見たらどうだい?」
と、奨めてくれた。

「明日、一緒にいって舟の交渉を助けるよ。
観光客相手にふっかけてくるから、一番安い舟を探そう。
さあ、今日はゆっくり眠って、明日の5時に起こしに行くから」

いつの間にか雨が上がり、
体調も復調の兆しが見えてきた。

「おやすみ」

笑顔でオーナーと別れ、部屋に戻った。
ヒンドゥーの聖地、シヴァの聖都で、
永遠に似た、やすらぎを手に入れた気がする。

 

旅のカケラ/slideshow

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