これがインドのやり方だ…。

ネパールからインドへ向かうためスノウリという町にいる。
先日の日記にも書いたが、国境の町は嫌いだ。

 

 

ババ・レストラン

例えばこんな目に合う。
ネパールのカトマンドゥで、
スノウリ→ゴーラクプール、ゴーラクプール→デリーの
バス、列車チケットを手配してあった。

インドの列車は、E-チケットというシステムがあり
オンラインで予約が可能。そのフォームをプリントアウトして
持っていけばそのまま列車に乗れる。
バスはそうはいかないため、指定の代理店に向かうことになった。

「ババ・レストラン」
ここが今回の事件現場である。
バスチケットの引き換え証を持って、
店を訪ねると、堪能に日本語を話すむっくりおやじと、
体格のいいタンクトップが現れた。
OK、OK!
そういいながらバスのチケットを用意しはじめた。

そして、列車のチケットは大丈夫?
と問うてきた。
あぁ、もう手配済みだよ。そう返事をすると、
どれどれと、チケットを出すように言われた。
チケットを手渡した。
むっくりおやじはタンクトップにそれを渡し、
「お茶を飲まないか?食事は?」と話題を変えた。
あやしい。

 

ノーサンキュー!

チケットを返すよう抗議すると、
今から電話で予約の確認をする、と言い出した。
タンクトップは忙しなくメモを取っている。
何をしているのか、妙な胸騒ぎがしたので
彼の手元を覗くと、
名前やパスポート番号、予約番号を書き写していた。

とっさにひらめいた。
予約をキャンセルして払い戻し金をかすめ取る気じゃ…。
チケットを返してくれ!
語気を強めて言った。

チケットは返ってきたが、すでに個人情報はヤツの手中。
しまったな…と思いつつも、
目当てのバスが来たので乗り込んだ。
なぜかふたりもついてくる。
一番後ろの端の席がそうだと言い、
妙な空気に戸惑いながらも、
事の成り行きに気を張った。

先制攻撃はずんむりおやじから。
「君のトレインチケットは完璧じゃない。
寝台のチャージ金が払われていない」
そう言い出した。
きたきた。
そんなわけはないし、そんなシステムがないことも知っている。
適当にかわそうとしたが、
つづいてタンクトップがしゃしゃり出た。
「差額を払わないと大変なことになる。
今ここで気がついて君はラッキーだよ」

ノーサンキュー!

そうあしらったが、彼らはしつこかった。
それは切り札があるからだろう。

「じゃあ、予約は取り消そう。
ゴーラクプールで後悔するがいい」

 

徹底抗戦

 

あぁ、できるものならどうぞ。
じゃあ、お金を返してもらうよ。

「残念でした。カトマンドゥまで戻らなきゃ
お金は返ってこないよ。
またビザを取って戻るかい?」

嫌味な日本語が返ってきた。
ここは見の姿勢を貫いた。さぁどう出る?

タンクトップが携帯電話を取り出し、
受話器に向かって声を張り上げた。
「あぁ、ジャパニーズ、
キャンセル、キャンセル!」
おそらくどこにも繋がっていないと思う。

どうやってキャンセルするのか仕組みはわからないが、
おそらく電話1本では不可能だろう。
しかも、払い戻し金をどうやって受け取る気だ。
ただ、例のメモが気になる。
あれは取り返さないと、
後から腹いせにキャンセルされるかもしれない。

電話の隙をみて、ヤツの手からメモを奪い取った。
電話を切り、「何をする!」と怒りに震える彼。
これは大事な個人情報なので返してもらうよ。
代わりに新しい紙をあげるから。
もちろんヤツの気は治まらない。

 

アウェイの洗礼

なんで俺を信用しないんだ!とますます怒りに震えていた。
それでも頑なに拒否をしつづけた。
カモを目の前にしながら手づまりの彼ら。
最後の手段はこれだった。

ガツっ、鈍い音がした。
つづけて2、3発の蹴り…。
騙し、脅し、最後は暴力だった。
バスの最後尾で逃げ場もなく、
殴られつづけた。
「ヘルプ…!ポリス…!」
そう助けを求めたが、
乗客は知らないふりを決め込んでいた。

ちっ、アウェイか…。

ただ不思議と恐くなく、
もう彼らにこれ以上の策がないことを悟った。
抵抗しようかとも考えたが、
あの体格、この腕っ節では、おそらく返り討ちだろう。
無力な自分を呪いながらも、
勝負に勝ったことで納得させた。

お前を殺して、捨てることだってできるんだ!

最後の捨てセリフを残して彼らはバスを降りていった。
待ってましたと、そ知らぬ顔の運転手がアクセルを踏んだ。

これがインドのやり方だ。
いつもカモにされるのは日本人。
金のないヤツは知恵を使い、
知恵のないヤツは暴力を使う。
日本人は金を使うか、
こうして黙って殴られるしかないのか…。

 

優しさのカケラ

ゴーラクプールの駅に着き、
ツーリストインフォメーションを訪ねた。
もちろんチケットは完璧だった。

「ここで休んでいきなさい」
そう優しく迎え入れてくれ、
扇風機を当ててくれた。
出発まで4時間以上あったので荷物を置かせてもらい、
食事に出かけた。

コーラを飲みながら部屋に戻ると、
「あら、あたしの分はないの?」
と、マダムは渋り顔だった。
OK、OKと喜んで
オレンジジュースを買いに走った。

こういうやり方だったら、
気持ちよくお金を遣えるのに。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です