フユタビ ’15(コーカサス編) ♯06 斜陽

ジョージアの果て、カズベキ。
コーカサス山脈に囲まれた小さな村にいる。

遥か山頂に位置する
ツミンダ・サメバ教会を目指す旅。

 

ツミンダ・サメバ教会

本来なら歩いて登りたいところだが、
雪が深く、そして時間に限りがある。
だから車で行くことにした。

ここまで乗ってきた車では
あの細く、急な雪道には耐えられないそうだ。
運転手はおもむろに携帯電話を取り出し、
誰かと話しはじめた。

現地のドライバー仲間に声をかけてくれたようだ。
ジープに乗り換え、いざ雪山へ。
もちろん、ここから先は別料金で、
交渉の末2000円ほどで連れていってもらえることに。

断崖絶壁を左右に車体を揺らしながら
走るためなかなかのスリルだ。
運転手は余裕たっぷりに
「マッサージみたいだろ」と、
身体も左右に振られながら笑っている。

約30分で辿り着いた、
トップオブザワールド。

 

風が強かった――

吹き飛ばされそうになりながら、
雪山登山の過酷さを知った。
かじかむ手に息を吹きかけ、
奥歯を噛みしめて何度もカメラのシャッターを切る。

過酷な状況にもかかわらず、
ため息がでるような充実感。
なんだか順調過ぎる旅が少し怖くもある。

標高2170メートルの山中に建っていることから
「限りなく天国に近い教会」とも称される。
イギリスの雑誌で「世界の驚くべき教会23」にも選ばれている。
14世紀に建てられた典型的なジョージア正教の教会。
中世の戦乱やソビエト時代には、
大切な宝物や聖遺物が保管され、
人々の信仰を守り続けてきた。
ここからもう少し行くと
ロシアのウラジカフカスだと思うと
本当にジョージアの最果てまで来たことを実感する。

教会の中はとても厳かな雰囲気で
ずいぶん遠くまで来たことにため息が漏れた。
扉を閉めると風の音がピタッと止み、
体温も徐々に回復していく。
小さな空間だったが、
ゆっくりじっくりと見学した。

「何か記念に」と、
小さな十字架のお守りを買い、
旅のカケラをそっとポケットにしまった。

 

カズベキでひと休み

カズベキ村に戻り、少し遅いランチ。
言葉が通じないため、注文は運転手がしてくれたので
何が出てくるのだろうと楽しみに待っていたら
ジョージア流BBQであるムスバリが登場。
鶏や豚を串焼きにしたもので、
スープやチャイもついて800円ほどだった。

本当はカズベキで1泊したかったが、
あまりにも情報がなかったため今回は日帰り。
今度来るときは緑の美しい時期が良さそうだ。

実はもうひとつ行きたい場所があり、
事前に運転手に告げておいたので、もと来た道をひた走り、
トビリシ方面へ戻った。

絶景にもすっかり慣れ、寒さから開放されたのと、
やりきった安堵から景色を眺めながら助手席でまどろんでいた。

 

古都ムツヘタ

午後4時。日はだいぶ西に傾いている。
旅と同じく、残り少ない時間が愛おしく思えてくる。
寂しさが混じったオレンジの斜陽。

ムツヘタの町は郷愁を感じる、
とても素朴な古都だった。
ムツヘタは紀元前4世紀頃まで
イベリア王国の首都として栄えた都で、
古い教会を含む町並みが世界遺産に登録されている。

まずはジョージア最古と言われる、
スヴェティ・ツホヴェリ大聖堂を見学した。

何度も口にしても噛まずに言えない、やっかいな名前…w
とても立派な佇まいで、
中に入ると美しいフレスコ画に息をのんだ。

そう、今日からしばらくは巡礼の旅となる。
最後に向かったのはこれまた山の頂にある
ジュヴァリ聖堂。

ジュヴァリとは十字架を意味する。
こちらは素朴な佇まいだったが、
西日に染まって、旅の終わりを演出してくれた。

眼下にはムツヘタの町並みが見渡せる。
長く伸びた自分の影を見つめ、
この長いドライブを締めくくった。

 

ひとりなのがもったいない。
誰かとこの感動を分かち合いたい、
そんな日々が続いている。
まったく想像していなかったコーカサスの景色は
見事に期待の遥か上をいった。

もっと、もっと
知らない世界をみたい!!
明日も早起きをがんばるしかないな。

旅のカケラ/slideshow

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