ハルタビ ’16(ペルシャ編) ♯7 TOO YOUNG TO CRY

 

定規で線を引いたようにひたすら真っ直ぐのびる、
砂漠の中の1本道。
メーターは時速170キロを指している。

 

砂漠の街を目指して

イランの最終ステージは砂漠の街、ヤズド。
午前8時、宿の中庭で朝食を済ませ
ヤズドに向かう車を待っていた。

当初はバスで行く予定だったが、
車をチャーターして向かうという旅行者に出会った。
一緒に行くことを決めたのは前日の夜、
24時を回ったころだった。

バスの4倍以上の値段だが、
ナイーンとチャクチャクの2箇所に寄って約5000円。
距離にしたら500㎞以上だからお得だと思う。

出発して30分、すぐに景色は砂漠に変わった。
最初の目的地であるナイーンまでは200㎞ほどだった。
時速170キロで飛ばすため、
2時間もかからずに町についた。

 

 

廃墟のキャラバンサライ

ナイ―ンはカヴィール砂漠の西端に近くにあり、
イスファハンから東へ200キロに位置する。
ここでは、特徴的な粘土でできた建物や10世紀からの遺跡と共に残る
イラン最古のモスクが見られる。

また絨毯が有名な町でもあり、仕上がりは最高クラスだとか。
中央にアラベスクと花のモチーフと一緒になったメダリオンが一般的で、
ナイン絨毯は「Nain Tuteshk」と呼ばれている。

特に情報を持ち合わせてなかったが、
かつてのキャラバンサライだろう跡が残っていて、
城塞らしき跡やバーザールの跡もあった。
土でできたほとんど廃墟の町は、ただ歩いているだけで
時がとまったかのような不思議な気持ちになる。

来て良かった!
しみじみと運の良さを感じる。
きっと、昨日辿り着けなかった、
サルアガセイエッドの分を
神さまが返してくれたのだろう。

小さなモスクを見つけた。
ここがイラン最古のモスクなのだろうか?
写真を撮っていると、
バイクに乗ったおじさんが何やら話しかけてくる。
言葉がわからないのでただニコニコしていたら、
バイクで走り去り、家からモスクの鍵を取ってきてくれた。

せっかくだから中を見学させてもらい、
少し涼んでから再び廃墟の町に出た。

モスクの脇の路地を曲がると、
1㎞ほどのバーザール跡があった。
天井から光の柱が差していて
無人の回廊はとても幻想的だった。

かつての賑わいからどれくらい経ったのだろう。
シルクロードの交易町を想像してみた。

最後に町の外れにある小高い丘に登った。
かつての宿場町と、いまのナイーンの町が見渡せる。
360度、どこを見ても素晴らしい景色。
ガイドブックに載っていない、特別なプレゼントをもらった。

 

 

ゾロアスター教の聖地

ナイーンからさらに2時間走り、
ゾロアスター教の聖地であるチャクチャクに向かった。
途中の景色は砂漠と岩山。
かつてチリで見たアタカマ砂漠のようだった。

ここまでの道中や岩肌に佇む外観は
見ておく価値があると思う。

岩山の間にひっそりと佇む神殿を発見。
長い坂を上っていき、中に入ってみた。
神殿内はこじんまりとしていて、
小さな火が灯っているだけだったが
厳かな雰囲気で心が休まる。

チャクチャクは、640年にサーサーン朝最後の王である、
ヤズデギルド3世の娘のニークバーヌーが、
ペルシアに侵攻したアラビア軍に追い詰められた場所と言われている。
神殿内では湧き水が滴り落ちていて、
山が悲しみの涙を流しているから、とされている。

ずいぶん遠くに来たもんだ――。

神殿から砂漠を見渡し、
木陰に座ってコーラを流し込んだ。
汗を乾いた風がぬぐってくれて心地いい。

夕方、ヤズドに着いた。
この街がイランの旅の最終ステージ。

明日からは空港泊なので、最後のホテルは奮発した。
86ドルのホテルを値切って50ドルに!
今まで800円くらいのホテルに泊まっていたから
ちょっと罪悪感を覚えたが、
ここで旅の終わりの準備をしようと思う。

 

旅のカケラ/slideshow

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