ベイブ、都会へ行く？

やっぱり都会は苦手だよ…。
１泊で充分！明日出発だ。

屋上で目覚める

午前５時３０分、薄暗い空を仰ぎながら目を覚ました。
うぅ、寒い…。なんでこんなとこで寝てるんだ？？

シリアのホテルでは、屋上部屋が一番安い。
どれくらい安いかというとシングルの半額で、
１泊３００円程度。ついつい安さに惹かれて、
昨夜も屋上にマットレスを敷いて寝たのだった。

早起きして向かうのは…

こんな早起きしたのには理由がある。
ここ「ハマ」から５０ｋｍほど離れた場所に、
「アパメア」という遺跡があり、そこを観に行きたかったから。
ひとり旅をしていると、衝動のままに行動できるため、
朝は観光、昼は移動と、一日のサイクルが早い早い。
よっぽど気に入った街じゃなきゃ連泊はしませんから。

街もバスもすべてアラビア文字。
ミミズがはったような文字で、
どこで区切れているのかも分からない…。
日本の速記もたしかこんな文字だったな。

というわけで。本日も目的地を連呼。
アパメア、アパメア、ん？アパメア！

迷子の子どものように腕を引っ張られて
アパメア行きのセルビスに誘導された。
セルビスとは乗り合いワゴンのことで、約１時間乗車した。
途中乗り換えがあったが、ちゃんと保護者が連れてってくれた。
料金は４５シリアポンド（約１１０円）だ。

小さな集落を歩く

アパメア遺跡は街の高台に位置し、途中には何もない。
パッチワークはないものの、
北海道の美瑛を彷彿とさせる景色が広がっていた。

近くの集落から子どもたちが飛び出してくる。
そして「スーラ、スーラ」と写真をねだられた。
よーし、ちょっと待ってな。
ファイダーを覗き、カメラを構えると
ピシっと気をつけして待っていた。

写真の後は決まってカンフーごっこ。
日本人と中国人の区別がつかない彼らは、
この手の顔を見ると必ず
「ジャッキーチェン？」と問う。
アチョー！
カンフーか空手か、それっぽい仕草をすると
キャッキャと歓声が上がり、
必死に真似てみせるから面白い。素朴でいいな。

アパメア遺跡

歩くこと２０分、そいつは突然姿を現した。
世界で最も美しいと言われる円柱通りだ。
なんでこんなところに！？
別世界？いや異次元に迷い込んだような、、、
とにかくすごい！スゴ過ぎるよ☆

気温４０度、でもテンションはすでに沸点に達したろう。
何度も驚嘆の溜息をこぼしながらシャッターを切った。

アパメアは、アレクサンダー大王亡き後のシリアを治めた
セレウコス一世が建設したという街で、
全長１８５０ｍというメインストリートの円柱がお見事。
なんてったって紀元前３世紀だよ！
それがこうして残ってるんだから不思議だよね。
２日前に食べた夕食すら思い出せない自分が恥ずかしい…。

時間が早いためか、僻地にあるためか、
人っ子ひとりいない。
こんな広大な遺跡にひとり。
現世とは別の世界を旅してる気分だった。
日がしだいに高くなり、円柱の影が短くなってきた頃、
遺跡を後にし、帰路についた。

無性にバスに揺られたくなった

ホテルに戻るとチェックアウト間近の１１時５０分だった。
急いで荷物をまとめ、バス停へ歩き出した。
歩いてる最中、今日はどこに行こうかと考えていた。
当初の予定では「ホムス」という隣街に移動するはずだったが、
無性にバスに揺られたくなった。
もっと遠くがいいな。

あんまり乗り気しないけど、やっぱあの街？？
ダマスカス、シリアの首都である。
この旅を始めてからずっと首都は苦手…。
情報が多過ぎて、いっぱいいっぱいになってしまうのだ。
そして人間も悪くなる…。
どうして都会に行けば行くほど、人が悪いのだろう？
単に田舎よりも人口が１０倍だから、
悪い人も１０倍に増えただけだろうか？

いや違う。
きっと貧富の差が顕著に表れるから、
嫉妬や欲が渦巻いているのだろう。
ダマスカス、
どうしても“騙すカズ”に聞こえてしまう…。