FR271(15:15ロンドン→16:35ダブリン)
小さな機体に乗り込み、今度こそアイルランドに行けると、
胸を撫で下ろす。ここからが本当の旅のスタートだ。
雨上がりのダブリン
3年ぶりに歴訪国をアップデートでき、
98カ国目、アイルランド!
心を癒す牧歌的な風景が広がる不思議な国アイルランド。
ヨーロッパの最果てにあるこの島国には、
今も神秘的なケルト文明の遺跡が残り、
独自の美の世界を見ることができる。
歴史を紐解くと、長くイングランドの支配を受け、
1920年に北アイルランドはイギリス領、南部にはアイルランド自由国が分離。
アイルランド自由国は自治か完全独立かで内紛が続き、
国号もエールを経て、1949年にアイルランド共和国となった。
空港を出るとバス乗り場があったが、
事前にホテルの人から聞いていたローカルバスを見つけることはできず、
少し高いけど、観光客用の大型バスに乗って移動することにした。
スマホでGoogleマップを開き、目的地近くで降ろしてもらった。
「Errigal Guest House」は、大通りに面していたのですぐに見つかった。
ちょうど急な夕立に遭い、間一髪で玄関に逃げ込んだ。
簡素な部屋だったが、異常なほどにダブリン(アイルランド)の宿は高く、
前払いすることで他の半額の約1.5万円で予約できた。
着替えを済ませ、出かける準備をした。
今は18時だが、日の入りは20時なので、まだまだ外は明るい。
さっきまでの雨が嘘のように上がっていて、
綺麗に洗濯された街に出かけた。
白鳥とリフィ川
街の中心までは約4kmあり、
バスを使おうかとも思ったが現金の持ち合わせがないので
歩いて向かうことにする。
ちなみにアイルランドの通貨は€(ユーロ)。
初めての街を歩くのは楽しい。
わかりやすい構造の街なので迷うこともなさそうだ。
カメラを構えながらぶらぶら歩いていると、
大きな白い鳥を見つけた。
近づいてみると、まさかの白鳥!?
目が合うと、そっとこちらに近づいてきたので
かなり人に慣れているようだ。
動物園以外でこれだけ間近で白鳥を見る機会もなく、
雨上がりの景色に佇む姿は神々しかった。
到着が8時間も遅くなったので
本来行く予定だった観光スポットを端折り、
今日はテンプルバーのパブを体験することにした。
まだ明日もダブリンの街歩きができるので、
充分に予定を組み直せそうだ。
いつもと違い、見どころが集約されているのも
ヨーロッパ旅の便利なところだろう。
4月の終わりなのに風は冷たく、気温も10℃くらいしかない。
以前、同じような時期に訪れたヘルシンキ(フィンランド)に似ている。
コロナが明け、こうやって再び旅ができることは本当に幸せに思う。
知らない場所を歩き、知らないものを眺め、
たくさんの選択肢から正解だと思う答えを選んでいくゲーム。
仮想現実にも似ているが、リアルな世界で味わう非日常は、
たくさんのリスクがある分、最高にエキサイティングだ。
「またいつか来れるかな?」
そう呟きながら、一期一会の時間を紡いでいく。
リフィ川に架かるオコンネル橋に着いた頃、
ちょうど夕暮れを迎えた。
街明かりが灯り始める、トライライトタイム。
今日が終わる寂しさと、煌びやかな夜の始まりが混在する、
胸がソワソワする不思議な時間帯である。
パブで過ごす異国の夜
リフィ川に架かるオコンネル橋を渡ると
テンプルバーと呼ばれるパブエリアがある。
テンプルバーという名前はテンプル騎士団の子孫である
ウィリアム・テンプルの名前からつけられたという。
週末なので人でごった返していて、
パブからは歓声と音楽が漏れ聞こえてきた。
このパブ文化は、アイルランドの苦難の歴史と
民族性が表れているような気がする。
さて、お目当てのパブは「The Brazen Head(ザ・ブレイズン・ヘッド)」。
ヨーロッパでも最も古いと言われるパブで、
創業はなんと1198年というから驚きだ。
もちろん人気店だし、予約もしていないので入れるだろうか?
トンネルのような入口を進むと、
1Fは中庭のようになっていて人で溢れていた。
みんなエールやギネスを片手に楽しそうだ。
誰も食事をしていないので、
きっと奥にダイニングルームがあるのだろう。
階段があったので2階に登ってみると、
そこはムーディーな空間になっていて、
テーブルで食事を楽しんでいた。
どこも席が空いていないので、スタッフに声をかけてみると
階段で待っていなさい、的なことを言って消えてしまった。
満席だし、今日は無理かな…と思いながらも
階段で待っていると、さっきのスタッフが戻ってきて
席に案内してくれた。
「相席でもいい?」と聞かれたが、もちろんと頷き、
元気そうなおばちゃんが二人で盛り上がっている席に連れていってくれた。
お肉ごろごろのギネスシチュー
おばちゃんたちは「あら日本人?」という感じで歓迎ムードだった。
注文の仕方がわからず戸惑っていると、
あれこれと世話を焼いてくれる。
癖のある英語だったので、なんとなくしかわからなかったが
とてもありがたかった。
ずっと夢中でおしゃべりを楽しんでいて、
勝手に素敵な人生を送っているんだな、と微笑ましく思った。
アイリッシュシチューをぜひ食べたいと思っていたので
ギネスビールを使った「ギネスシチュー」と、
リンゴのワイン「サイダー」を注文した。
いわゆるシードルだね。
お肉たっぷりのギネスシチューは、
塩気と、ビールの芳醇なコクがあって想像以上に美味しい!
パンはサービスなのか、勝手についてきて、
ちょっとぼそぼそするけど、シチューによく合う。
ノンアルのギネスビールがあるというので、
せっかくなので注文してみた。
元々ビールは苦手なので、美味しくはなかったが
これが本場の味なのね、と苦味に顔を顰めながら少しだけ口にした。
初めてパブに入ったが、思った以上に敷居が低く、
日本の居酒屋よりも断然居心地がいい。
何より、異国の夜をこんな空間で過ごすことが洒落てて、
最高の気分だった。
お酒よりも、雰囲気に酔う感じだね。
今回の旅では何度もパブに行く予定なので
ちょっと癖になりそうだw
冷たい夜風にあたりながら、
ほろ酔い状態でホテルへと歩いて帰る。
テンプルバーはまだまだこれからが本番の盛り上がりを迎えるのだろう。
笑い声とジャジーな音楽、人いきれ。
ホテルまでは1時間くらいはかかるかな。
ここまで色々ありすぎて疲れ果てていたけど、
今は不思議と悪くない気分。
日本を出発してから丸2日、
ようやく今夜はゆっくり眠れそうだ。
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