夢のつづき

レーに来て2日目。今日はたっぷりと街を見て歩こう。
ホテルを出ると、空は青空、
さんさんと降り注ぐ陽光と澄んだ空気が待っていた。

 

旧レー王国とラモー

小学校へ向かう子どもや、のそりと道を歩く牛をかわしながら、
坂の街を上っていく。
バザールを通り抜け、モスクを横切り、
街を見下ろすようにそびえる「旧レー王国」を
仰ぎ見ながら街を闊歩する。

昨日知り合った日本人との約束があったため
集合場所である旅行代理店へ向かった。
なんでも、有名な呪術師に会えるという。
「ラモー」というおばあちゃんで、
トランス状態になったあと奇妙な言葉を発しながら
身体の悪い部分に吸い付き、毒素を抜くという。
しかも、その毒素が青や赤、黄色といった煙に変わり
口から吐き出すというから、ぜひとも見てみたい。

コンタクト役のガイドを交え、呪術師の家を訪ねた。
先に様子を見に行ったガイドが戻ってきた。
今は不在だからしばらく待ってろ、
まだトランス状態に入っていない、
どこかに出かけてしまった、
と、空振りを繰り返し、結局後日出直すことに…。

こうしてよくわからないまま、午前中が終わってしまった。

 

古の風を感じながら

昼食を摂ったあと、旧レー王国を訪れることにした。
この王宮が建てられたのは1640年頃。
当時の王であったセンゲ・ナムギャルがこの王宮を建設し、
以降レーはさらなる繁栄を見せたという。

ただでさえ標高の高いレーの街の、
さらに高台に位置しているため、
息を切らせながら、ゴールを目指した。
重層な王宮に古の風を感じながら、
噴出した額の汗を拭う。
眼下にはジオラマみたいに小さな町が広がっていて
なんとも言えない絶景だった。

薄い空気を身体いっぱい吸い込むように大きく深呼吸。
中国の香格里拉(シャングリラ)で見た
“夢のつづき”がここにあった。

 

ナムギャル・ツェモ

さらに見上げると、王宮の上に
「ナムギャル・ツェモ」というゴンパがある。
歩けば30分くらいだ。
重い腰をあげ、つま先に力を込めた。
左右によろめきながら、砂の一本道を進む。

もう風の音しか聞こえない。

タルチョがはためく岩山に腰掛け、
小さく「やった」と、自分を褒めた。
街がさらに小さくなっていて、雄大なヒマラヤが見渡せる。
ずっと憧れていた街をぼーっと眺め、
夢が叶った瞬間の達成感と安堵感に身を委ねた。
明日はさらに郊外にあるゴンパを訪れる。

 

永遠にも似た幸福

まだまだ夢のつづきは終わりそうにない。
永遠にも似た幸福のなかで、
言葉では語りつくせないヨロコビ。
これはある意味、ラモーのようなトランス状態なのかもしれない。
今、心の窓は開け放たれ、
そこをチベットの風が吹きぬけていくようだった。

 

旅のカケラ/slideshow

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