トルファンの人情餃子店

「火州」と呼ばれるトルファン。
日が長く、夜の9時でもまだ明るい。

 

餃子の店

旅をしていると、行きつけの店ができる。
毎回、博打のように店をチョイスするよりも、
確実に口に合う店に入ったほうが落ち着くのだ。
トルファンでもそんな店ができた。

おばあちゃんの笑顔に惹かれて入った店だったが、
とにかく安くて旨い。
アツアツの手作り餃子が1個0.3元(3円)で、
味も6種類あるから飽きさせない。
夜、朝、夜、朝と、2日で4回も顔を出した。
おばあちゃんはもちろん、
ご主人も女将さんもすっかり顔馴染みだ。

トルファンを観光していたため、
昨夜はお店へ行く時間がずいぶん遅くなってしまった。
のれん(ないけど…)をくぐると、すっかり店じまいをして
家族でまかないを食べていた。

「しまった、遅かったか…」

 

餃子とワンタンスープ

少ししょんぼりしながら帰ろうとすると、
「簡単なものならできるよ」と、手招きする。

彼らは食事を中断し、再び厨房へ。
トントントンと、小気味いい包丁や
ジューっと食欲をそそる音が聞こえてくる。
でてきたのは餃子とワンタンスープ(中国では混沌湯と書く)。

ほふほふと餃子を頬張り、ぐいっとスープで流し込む。
食物が美味しいと、しみじみと幸せを実感するもの。
家族のだんらんに加わり、
お腹も心も、どんどんあったかくなっていく。
優しさも、愛情も、そして明日の別れも
すべてを噛み締めながら、箸を進めた。
テレビではジャッキーチェーンが必死に闘っていた。
どうやら『酔拳』のようだ。

「日本でもジャッキーは有名かい?」

口をもぐもぐさせながら、もちろん!と親指を立てた。
ニコっと笑い、
彼らのまかないだった佃煮(?)が追加された。

 

オアシス

こうして夜は更けていった―。

今、人情餃子店の包子を頬張りながら
カタカタとパソコンを叩いている。
列車の窓には、タクラマカン砂漠がどこまでも果てしない。

もちろん今朝もお店に行き、たらふくご馳走になった。
「列車で食べたいから」と、お土産まで包んでもらって。
もう、砂漠に溶けてしまったトルファン。
でも、あの家族の笑顔だけは
蜃気楼よりもはっきりと心に揺らめいている。

「オアシス」

そう呼ぶのが、しっくりくる店だったなぁ。

旅のカケラ/slideshow

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