Sign

時は容赦なく過ぎるもの、
旅路の果てに見つけたものはサウダージだった。

 

ペンション・アミーゴ

メキシコシティ。
ここで過ごす時間はあとわずか。
今日は宿を移ることにした。
『ペンション・アミーゴ』
超が付くほど有名な日本人宿である。

「こんにちわ~」
重たい鉄の扉をくぐると、中庭に沿って建つ古めかしい建物。
たくさんの洗濯物が干してあり、
昼寝なのか、まだ多くの人がベッドで横になっていた。
部屋はドミトリー、どの部屋も荷物で散らかっている。
ジャラジャラジャラ、奥のリビングでは麻雀の音…。
アジアの光景、旅のはじまりがこんな感じだった。

懐かしい。
でも、急に周囲が日本人だらけになり落ち着かない。
すぐに宿を飛び出し、街歩きに出かけた。

 

国立人類学博物館

「最後」という言葉が重たくのしかかる。
でも、ここは敢えてのんびり過ごすことにした。
向かった先は「国立人類学博物館」。
日本にいるときならライフスタイルにない選択肢。
昨日、旅のラストを飾る遺跡「テオティワカン」を見てきたので
もう一度おさらいの意味を込めて
メキシコ古代文明の足跡を辿ってみようと思う。

この博物館は世界でも有数の規模と内容を誇る。
テオティワカン、アステカ、マヤ…、
中米の遺跡のキーワードが勢ぞろいし、
貴重な発掘品はすべてここに集められているそうだ。
フロアは年代順に12室に別れているので
過去から現在へと、タイムトラベルに出かけることにした。´

 

歴史を辿る

第1室「先住民文化」
なぜか扉に鍵がかかっていて入れない…。
公開準備中?
では、気を取り直してすぐ隣の部屋へ向かった。

第2室「人類学入門」
ここは人類史におけるアメリカ大陸、
さらにはメキシコの位置づけを解説している。
エジプトの考古学博物館も充実した博物館だったが
ここも負けてはいない。
展示ケースがキレイで、照明の使い方も効果的だ。
そして何より写真撮影が自由なのがうれしい。

第3室「アメリカの起源」
歴史をジオラマ仕立てで解説。
マヤの創世神話によれば人類はトウモロコシから発生したとある。

第4室「先古典期」
農耕が始まった。
集落から都市へ、そして文化が始まったのもこの頃。

第5室「テオティワカン」
実物大に復元されたケツァルコアトル神殿、
月のピラミッドの前に建っていた雨神
「チャルティトゥリクエ」がここの目玉。
あのテオティワカンの感動が蘇ってきた!
ここに行ったんだよ、この足で歩いたんだよ。

第6室「トルテカ」
時間の都合でトゥーラ遺跡には行けなかったので
ここでトルテカ文明を拝めてよかった。
鎮座する戦士像、う~ん古代ロマン♪

 

終わらないロマン

 

第7室「メヒカ」
足が重たくなってきた。
空調の効いた快適な空間なのに
あまりに広く、展示物の多さにさんざん歩き回ることになる。
がんばれ、これで半分。
そして最大の見せ場にやってきた。

この部屋には太陽の石「アステカ・カレンダー」がある。
巨大な石に複雑なレリーフが施され
アステカ人の神秘的な宇宙観を刻み込んでいた。
永遠の時を刻む象徴的な聖石。
過去と現在を結びつけるSign(サイン)。

第8室「オアハカ」
ここも見逃した遺跡の1つ。
壮大な古代都市を築いた様が見て取れ、
地下室にはモンテ・アルバン104号墳墓が再現されている。
色づかいや優雅なモザイク、きっと美しい王都があったのだろう。

第9室「メキシコ湾岸」
もう足が痛い…。
こんなにもじっくりと博物館見学をしたのは初めて。
感動が薄れないか心配だったが、そこは集中力で乗り切ろう。
ここはオルメカの巨大人頭像、笑う顔の土偶が展示されていた。

第10室「マヤ」
タイムトラベルもあと少し。
大好きなマヤ文明までやって来た。
ここの目玉は地下室にある「パレンケの王墓」だろう。
残念ながら遠目でしか見学できなかったが
パカル王が身に着けていた翡翠の仮面は見ごたえ充分。

マヤとエジプト、ずいぶん距離も時代も離れているが
実に共通点が多い。
どちらも多くの謎に包まれているから
ひょっとしたら今後新しい見解が発表されるかもしれない。
いやぁ、過去も未来もそうだけど、
わからないことが多いってワクワクさせられるね。

第11室「西部」、第12室「北部」
ここはもうおまけみたいなもの。
マヤやアステカを見た後じゃデザート感覚で
さっと眺めて済ませた。

 

残された時間

 

見学に所要3時間、
いつも遺跡を見学する時間もこれくらいだが
情報量の多さに疲れはいつも以上だった。
もうお腹いっぱい。
まだ2階フロアに民俗学のコーナーが残されていたが
さすがに階段を登る気力すら薄れ、またの機会にすることにした。

人類の歩み、歴史の足跡。
そして59ヶ国を巡ったこの旅路。
容赦なく過ぎ行く時の中で刻んできたものがある。

Sign

「残された時間が僕らにはあるから、
大切にしなきゃと小さく笑った―」

 

旅のカケラ/slideshow

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