ない、ナイ、無い…。でも、あきらめない

午前3時、
宿のオーナーに頼んでおいたタクシーは来なかった。
きっと忘れてしまったか、意図が伝わらなかったのだろう…。

よくあることだ、だったら歩けばいい。
街燈もない街は真っ暗、
バスターミナルまでの4kmを歩き始めた。

 

バスターミナルを目指して

問題は道がわからないこと。
幹線道路から外れないように進んだが、
どんどん森の中に入っていく…。
困ったもんだな、どうしようか!?

こんな時間だから人も通らない。
遠くに明かりが見え、次第に近づいてきた。
しめた!車だ!!
懐中電灯を振りながら車道に出て、
停まってくれぇ!と合図を送った。
白いトラックだった。

「バスターミナルに行きたいんだけど、
道がわからなくて…」
そう告げると、予想外の答えが帰ってきた。

「今日はもうバスがないよ」
え!? まだ4時前なのに??

ここはジンバブエのビクトリア・フォールズ。
約500km先の「ブラワヨ」という街に行きたいわけだが、
バスは1日に1本。
宿のオーナーは午前4時発だと言っていたが、
もっと早い時間に出発してしまうようだ…。

 

ヒッチハイク

今、ジンバブエは激しいインフレと物不足に陥っている。
ガソリンもなかなか手に入らないので、
バスは激減…車も滅多に走っていない状態だ。

せっかく早起きしたのに、また明日!?
いやいや、食事さえままならないこの街では辛すぎる。
こうなりゃ自力で突破口を開こうじゃないの。
ヒッチハイクという選択肢を選んだ。

トラックの運転手オススメのポイントに立ち、
車を待つことにした。
ここまで1時間近く歩いてきたが、
反対方向に向かう1台の車とすれ違っただけで
車なんて全然通らない…。大丈夫か?

待つこと3分、眩しいライトに目を細めた。
き、来たよ!?
ゆっくりと車が近づいてくる。
白い大きな車体。
メルセデス・ベンツのマークが入ったキレイなミニバスだった。

「ブラワヨまで乗せてってほしいんだけど…」

2つ返事でOKをもらい、荷物を詰め込んだ。
金額を交渉すると、
想定していた額よりも少ない15ドル。
この車と幸運を逃がさないためにも、
ここは値切らずにおこう。

 

なんとかしよう!

見晴らしのいい助手席に乗せてもらい、
安堵に胸を撫で下ろした。
たった3分、1台目の車に乗せてもらえるなんて
ホント、ついてるなぁ。(しみじみ)

困ったことが起こると人は2種類に分かれる。
“なんとかなる”と思う人と、“なんとかしよう”と思う人。
なんとかなると思って、何もしないことは間違いで
それは腹をくくることではない。
もちろん腹をくくるだけじゃ事態は改善しないし、
ただ指をくわえているのでは、
事態はむしろ悪化していくだろう。

なんとかしよう!
そう思って策を練るから、その意思に世の中が呼応する。
助けてくれる人が現れるかもしれないし、
こうやって幸運なことが起きたりする。
運命や未来は切り開くというより、
引き寄せるというのが正しいようだ。

↑商品がないスーパー

そういえば高校時代、清水先生という数学の先生がいた。
彼の口癖は「あがけよ」で、
テスト中もこの言葉を口にしながら教室を回る。
あがいたって、解けないものは解けないよ!
そう呟きながら頭を掻きむしり、
答案用紙とにらめっこをしていたあの頃。
数学なんて社会に出て必要のない科目だろうけど、
彼が教えたかったのは
あきらめないこと、だったと思う。

解ける、解けないじゃなく、
いろんな角度から物事を考えることの大切さを学んだ。
微分も積分も関数も、ぜーんぶ忘れちゃったけど
一番大事な“方程式”だけが残った。
この旅でとっても役立ってるよ(笑

 

マシンゴ行き

2時間後、ガソリンスタンドを探して街を彷徨った。
この国では今、ガソリンが枯渇しているため、
多くのスタンドが閉鎖していた。
ようやく1軒を探し当て、20リットルの給油。
1リットルあたり130円と、
この国の物価をしてみれば破格の高さである。

この車はブラワヨ行きの不定期バスだったようで、
途中で人を乗り降りさせながらひた走った。
おかしなことに、誰もジンバブエドルを使用しない。
ボツワナのプラ、南アフリカのランドが主流で、
皆だいたい1000円程度の金額を支払っていた。
9時間後、ブラワヨのバスターミナルに着き、
親切な運転手が次のバスを探す手伝いをしてくれた。

ここでも幸いなことに「マシンゴ」行きのバスがあり、
1泊刻まずにもう1つ先の街まで行けることになった。
なかなか人が集まらず、出発まで3時間待ったが、
出発してもガソリンを手に入れるため1時間街を彷徨ったが、
それでも午後10時にマシンゴの街にたどり着いた。

今日も700km以上の移動をしたことになる。
※ブラワヨ→マシンゴ(4時間/1200円)

今日を引き寄せ、明日につなげる。
そんな繰り替えしで旅はつづいていく。
物がない、バスがない、ガソリンがない…
ないないづくしのこの国でも、予定通りに旅はつづいている。

あがけばいい、なんとかしよう。
まぁ、不安はつきないけど、
これも退屈しのぎにちょうどいいのかな?
どん!と構えれるほど大人じゃないから、
渦中にいるときは必死の形相になってるけどね(笑

 

 

旅のカケラ/slideshow

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