ジンバブエの奇跡 ~後編~

「ハロー」
白人カップルに声をかけられた。
貸切だと思っていた遺跡に観光客がいた。

 

奇跡の出会い

お互いに観光客が珍しかったのだろう、
どこか安心した気分になり、しばらく会話をつづけた。

「どこの出身ですか?」
お決まりの質問をぶつけると、
「南アフリカだよ」と彼が答え、
「私も」と彼女が頷いた。
ここから話は急展開を迎える。

「そうなんだ!実は明日南アフリカに行く予定なんだ」
ひょんな偶然に嬉しくなり、
すっかり友達感覚で話が弾んだ。

「どこまで行くんだい?
よかったら僕らの車に乗っていきなよ」

え、マジで!?願ってもないお誘い♪
ところが、いつ出発するのか尋ねると、
「今から」というじゃないか…。

い、今すぐっすか??

 

回りはじめる運命

さぁ、頭がフル回転する。ひとり会議が始まった。
ここはジンバブエ→インフレがひどい→物がない→そう、ガソリンも…
→だからバスがない→昨日はヒッチハイクした→明日もヒッチハイク?
→そんなに上手くいくか?→でも今日の宿代払ったしなぁ
→いいじゃん5ドルくらい→渡りに舟だぜ→そう?

よし、決めた!
行きます、今すぐ行きますとも!
私を“南ア”に連れってって!!

宿に荷物が置きっぱなしなのでひとまずマシンゴの街に戻り、
宿の近くにある郵便局を待ち合わせの場所に決めた。
待たせていたタクシーに急いで戻り、
「もういいのかい?」といいたげな運転手に出発を急かした。

宿に戻ると20分で荷物をまとめ
宿のオーナーに拝み倒して宿代を半額にまけてもらった。
待ち合わせの時刻、郵便局、彼らはちゃんと来てくれた☆

 

いざ、南アフリカへ

そうそう彼らの名前。
彼がコナンで、彼女がメグン。
ふたりともヨハネスブルグに住んでいるという。
ヨハネスは“世界で一番危険な街”と言われているので
すぐ隣の首都「プレトリア」をリクエストしたが、
「プレトリアなんて何にもない街だよ、
ヨハネスにしなって!」と、押し切られてしまった。

宿まで送り届けてくれると言うし、
彼らの街を、危険!危険!と連呼するのもはばかれたので
素直に従うことにした。

 

車の後部座席にお邪魔し、
ヨハネスブルグまでのおよそ700kmを
荷物と一緒に丸まって過ごした。
マットが敷いてあったので、
すっかり身体を横たえ、寛ぎまくり。

いつでも運転を代わるよ!と、言ったものの
道がわからないし、ここはひとつ大人しくしてましょ。

37ヶ国目は「南アフリカ」
アフリカ大陸の終着地である。

 

アフリカの終わり近い

 

国境を越えたベイトブリッジの街で銀行に寄ってもらった。
ATMで「南アフリカランド」を引き出し、
その足でレストランへ。
ここはもうアフリカじゃないね。
道はキレイだし、店もスタイリッシュ。
ステーキ店に入り、350gの特大ステーキを注文した。
ドリンクとあわせて700円以上したが、
いいのいいの。
ジンバブエじゃ食パンくらいしか食べてないんだから。

運ばれてきた伝票をかすめとり、
彼らの分も払おうとすると、
「ノー、ノー」と首を振る。
いいや、ここは譲れない!
だって、ガソリン代も受け取ろうとしないし、
せめて食事代くらい払わせてもらわないと夢見が悪い。
こっちも負けじと「ノー、ノー」と首を振って
支払いを済ませた。

車に乗り込むと急激な眠気が…。
彼らには悪いがこのまま寝かせてもらおう。
アジアを抜けてトルコに辿り着いたときも
都会で洗練された街に驚いたが、
アフリカを抜けてきた今では、この国には感動すら覚えた。

まるで日本!
車窓を流れていくネオンを見つめながら
懐かしさと安心した気持ちで眠りに堕ちた。

もう、辛いアフリカ旅は終わったんだ…。

 

旅のカケラ/slideshow

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