Replay

ムルンダヴァ→フィアナランツィア、
24時間の大移動が始まる。

 

すし詰めワゴン、再び

来たときと同じ、狭いすし詰めワゴン…。
悪夢の再来である。
ただ、今回は5日前に予約したため
助手席を確保してあるのがせめてもの救い。

出発は正午、
まさか定刻に出発するはずもなく、
近くのカフェ(掘っ立て小屋)でレモネードを飲む。
時間を気にしたら負けだ、
心静かに“Replay”が始まるのを待った。

出発を知らせるクラクションが鳴った。
30分遅れとは上出来である。
最前列は3人。
運転席と助手席、そして真ん中の席。
相方とふたりで行動しているため、
助手席と真ん中の席を3時間交代することにした。

助手席はこのワゴンで最上級!
足は伸ばせるし、窓に肘をかけて優雅、優雅。
一方の真ん中は、背もたれが小さく
頭の置き場所がないうえ、
オーディオが邪魔して足が伸ばせない…。
ギアのシフトレバーも気にしながら
じっとしていなければならない。
ここはハズレだ、辛い…。

後ろを振り返ると、さらなる地獄絵図が!!
蒸し暑い中、肩を寄せ合っての4人がけ。
最後列なんて、大人2人、子ども5人の
7人がけ!
前後にジグザグ隊列を組み、
まるで中国雑技段の曲乗り状態…。

ラブワゴンならぬ、地獄ワゴンは
見知らぬ男女20人を詰め込んで、
真実の“哀”を探す、24時間の旅に出た。

 

苦難の道

まず不安にさせたのがエンジンのコンディション。
いくらキーを回せど、
ク、ク、ク、ク~ン、と乾いた音がするばかりで
エンジンはかからない…。
仕方なく、乗客数名がワゴンを押し、
その反動を利用してもう一度エンジンON!
ダダダダダッダダン!ド、ド、ドドドドド~
押しがけである。

「だ、大丈夫?」
運転手の顔をのぞき込むと
親指を立ててニカっと笑っていた。
前途多難…、もうなるようにしかならない。

2時間半走っては30分休む、
そんな繰り返し。
その度に席を交代して長丁場に備えた。
明るいうちはカメラ片手に景色を堪能。
暗くなるとiPodにバトンタッチした。

8時間が過ぎたころ、舗装道は途絶え、
ぬかるみが残るダートが始まった。
慎重に轍をかわす運転手。
上り坂ではタイヤが横滑りし、
一瞬冷やりとさせられる。
停まりそうになりながらも、
ぜいぜいとエンジンを唸らせて
なんとかその坂を上りきると、
自然と拍手をしていた。

「ドコンジョー」(運転手)
「うん、ど根性!」

意味はわからないが、
発音は日本語と似ていた。
きっと、同じようなニュアンスなのだろう。
ど根性!ど根性!と運転手を励ますと、
乗客から笑いが起こった。
あれっ?使い方違ったのかなぁ??

 

 

夜を越えて

22時、遅めの夕食をとり、
27時、コーヒーブレイク。
出発してから12時間が経過し、
身体中が痛くなってきた。

このあと軽い悲劇が起こった。
真ん中の席はとにかく眠れない。
ワゴンが停車し、小休憩に入る。
ようやく席を交代する時間だと思いきや、
相方くん熟睡…。
「代わって」と、起こすこともはばかれたので
泣く泣く、真ん中の席を続行…。

眠ることを諦め、歌詞をずっと追いかけて
朝を迎えた。
空が燃えるような朝焼け、
肌寒さを感じながらもワゴンを降り、
大きく伸びをしながら
雄大な景色に息を飲んだ。

すでに17時間が経過したが、
フィアナランツィアはまだ遠い…。

 

旅のカケラ/slideshow

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です