エチオピアは南部に行くほど、
人が悪くなっていく…。
バスの荷物代、勝手にガイド、強気な物乞い。
ハローのふた言目には「マネー」だもの、
苦笑いがつづく。
気さくに話しかけてくれるのはいいけど、
8割がたお金目当てだから、
もう誰を信じていいのやら…。
アルバミンチに向かうバス
シャシャマネという町を1泊で切り抜け、
「アルバミンチ」を目指す。
バスは午前6時発で、
36.5ブル(約365円)だった。
狭い3人掛けシートは、
ひとり30センチ幅のスペースしかなく、
身動きはほとんどとれない。
揺れに身をあずけて、眠るしかない。
ある意味泣き寝入りってやつ。
iPod交換
「iPod、交換しませんか?」
新メンバーのヒロくんからそう提案があった。
旅立ってまもなく9ヶ月。
バス移動の心強い相棒っど(iPod)は、
すでに全曲聞き終わり、鮮度はガタ落ち…。
大崎善男の『パイロットフィッシュ』に出てくる
「音楽や本は、好きなものが少しあればそれでいい」
というフレーズが好きだったが、
そんなカッコイイ台詞も呟けないほど
聞き飽きてしまった。
「しよう、しよう」
お互いのiPodを交換し、
カラカラと親指でリストをめくった。
GReeeeN、いいね♪
湘南乃風かぁ、いいよ、いいよ。
おっ、ケツノポリス5もあるじゃん☆
長渕剛ベストもシブイな。
Kiroroって懐かしい(笑
ひとのiPodは楽しい。
普段なら頭の2、3曲で
夢の中へと堕ちるのに、
流れる景色をPVに見立てて
歌詞の世界へと入っていった。
9時間後、
アルバミンチに到着するまで
ずっと空に唄っていた。
新たな記憶と意味
旅が長くなるにつれ、
日本の匂いが薄れていく。
その中で音楽は、日本へと思いを馳せるために
とても重要なアイテムである。
歌詞を追いかけながら、
その当時の自分を回想していく。
“思い出ソング”なんて大それたものじゃないが、
特に学生時代の記憶が甦ってくるもので、
あぁ、ずいぶん時間が経ったな、と
過ぎ去った時の重さに驚かされる。
濃い時間ほど、曲はたくさんの記憶を紡いでくれる。
そうか、この旅もまた同じだ。
浮かれ気分で始まった旅は
アジア、中近東を抜け、
憧れだったアフリカ大陸まで進んだ。
今、こうして聞いている曲たちもまた
新たな記憶と意味を持って
ずっと先の未来へつながっていくのだろう。
その未来で、
あぁ、あのときは…なんて、
空に唄っている自分がいるはずだ。
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