アキタビ’10(フィリピン編)#5 ロードムービー

チャンチャンチャン
ドンドンドンドンドン。

不思議な音で目が覚めた。
何だろうと窓の外を覗いてみると、
おっと、この部屋には窓がない…。
部屋から出てテラスに向かった。

チャンチャンチャン
ドンドンドンドンドン。

祭りだ!

 

祭りの朝

道路の両端には人だかり。
そしてその中央を民族衣装に身を包んだ
パレード隊が練り歩いていた。
鍬や鋤、盾や槍を持った人たちの列が
太鼓の音に合わせて踊り跳ねる。
フィリピン版“よさこい”といったところか。

カメラを携え、道路に飛び出し
最前列を陣取って祭りを鑑賞することに。
照りつける日差しが今日も眩しかった。

さて今日は移動日。
ここボントックから首都マニラまで
一気に南下する。
名残惜しい気もするが
この時期は雨で道が冠水するので
早めにマニラに向かっておくのが得策だ。
出発は午後3時。よし、まだ6時間もある。

 

ボントックを巡る

朝食はいつも通り市場の食堂で済ませる。
昨日と合わせて3回目なので
すっかり顔を覚えてもらった。
鍋を開け、気に入ったおかずを指差す。

スープとライスはセットなので
あとはコーラを1本付ければOK。
スプーンでごはんとよく混ぜて勢いよくかきこむ。
うん、旨い!

食後は別のカフェでハロハロを注文。
店ごとに内容が異なるようで
今回のハロハロはミントのアイスと
豆の甘露煮がよく合っていて旨い。

一度宿に戻りチェックアウトを済ませる。
荷物をそのまま預かってもらい
今度は博物館へ向かうことにした。

 

ボントック博物館

「ボントック博物館」
ここでは山岳民族の暮らしが覗ける。

「ハロー」
受付には誰もいない。
しばし館内を巡るもやっぱり誰もいない。
外に出て庭に回ってみた。
おばちゃんがひとり草むしりをしている。
「ハロー」
声をかけると汗を拭いながら
「ようこそ!」
と、抜群の笑顔で応じてくれた。

入場料は50ペソ(約100円)。
館内には山岳民族の写真や絵画、生活用品が
ところ狭しと並べられている。
民族ごとにブースが区分けされ
英語で何やら説明書きがあるが
翻訳するのが面倒だったので
展示物だけをじっくり見ておいた。

庭には民族の伝統的な家屋が再現されていて
中に入ることもできる。
こんな山奥の小さな町にしては
ずいぶんと力の入った博物館だと感心した。

1時間ほどブラブラし、隣接する土産店に足を運んだ。
こういう場所の土産はたいがい高価なので
冷やかしだけにしようと思ったが、いやいや安い!
町で売られているものより品質が良く
しかも値段はほぼ変わらない(むしろ安いかも)。
マニラに行ったらきっと高くなるはずだから
今のうちに買っておくか。
長旅では荷物になるからと土産は断念していたが
短期の旅だと土産探しも楽しい。

 

マニラへGo

そうこうしているうちに出発の時刻が迫ってきた。
「Cable Café」の前にはずいぶんとオンボロバスが…。
まさかこれじゃないだろうな!?
フロント部分にはしっかりと「マニラ」と書かれていた。

……。

デラックスなバスを期待していたが
まぁ仕方がない。
幸い4列シートの隣は空席だったし
一応エアコン付きだし。

午後3時。
定刻通りにバスは低い唸り声を上げた。

■ボントック→マニラ 所要時間12h/650ペソ(約1300円)

このエアコンが曲者だった。
最初は壊れてるのか?
ってくらい生温かい風しか出なかったくせに
どんどん元気になっていく。
もういい加減寒いから!
と、あさっての方向に向けるも
車内はガンガン冷えていく。
リュックから長袖を出して着込むも
夜はとにかく凍えて眠れなかった…。

別に明日が仕事でもないし、
旅先では眠れない夜もまた楽しい。
iPhoneを取り出し、好きな曲をチョイス。
流れる景色と歌詞を追いかけ、
“あの”旅を思い出していた。

バスで世界一周。
我ながらよくやったものだ。
300本という長距離バスを乗り継ぎ
58の国を巡った。
森を抜け、砂漠を越え、草原をひた走った。
もう一度やれ!と言われたら
まず不可能だろう。
人は一度辛い思いを経験すると
強くなった気持ちになるが
ホントは弱くなっていると思う。
もうあんな思いは…
ときに経験値が逆に足かせになるものだ。
何も知らなかったから
あんな大冒険ができたのだろう。
すべては希望に満ちていたから。

もし、人生に置き換えるなら、
経験を生かすよりも
未知のことに挑戦することのほうが
きっと何倍もパワーが出ると思う。
未知なる挑戦は実は勝機が多いのかも。

気が付くと眠っていた。
窓の外は無数のネオンが煌く。
「マニラだ…」
眠らない街が遠くに見えた。

高速道路を降りたところで
バスに異変が起きた。
近くの原っぱに停車し
運転手が何やら点検をはじめた。
待つこと20分、
運転手は困った顔でこう述べた。

「ストップ・オーバー」

はて、ここは一体どこなのだろう?
運転手に尋ねると
「ケソン」だと言う。
えっ、ケソン!?
嫌な予感がしてすぐに地図で確かめる。
やっぱり…。
マニラの中でも一番外れの地区。
目的の宿はマラテ地区にあり
ここからタクシーで行くとなると
一体いくらかかることやら。

しかも時刻は午前2時。
都会の夜は怖い。
タクシー代も気になるが
何よりも身の安全が心配だ。
マニラなんて怖いイメージしかないし…。
ぐずぐずしながら荷物をまとめていると
運転手に声をかけられた。

「まだ暗いし危険だ。
しばらくここで休んでいきなさい」

故障したバスが急遽ホテルになった。
運転手も一番後ろの席で眠りにつく。
乗客も何人かがこのまま夜明けを待つようだ。
これは助かった!と
シートを深く倒して目を閉じる。
遠くに街の喧騒を聞きながら
夜より深く眠った。

 

旅のカケラ/slideshow

 

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