帰れない…。

イスラエルに入って5日、
帰れない…。

 

日本宿

『Faisal』という日本人宿にいるのだが、
ここで出会ったメンバーが憎いほどいいヤツばかり。
先日のパレスチナデモに参加したことにより、
その絆はいっそう深まり、
いわゆる“戦友”だと思っている。

日本人宿とは、世界各地にある安宿の中で、
とりわけ日本人が多く集まる宿を指す。
この宿もイスラエルでNo.1の日本人宿で、
常時10人は日本人客がいる。

東南アジアを旅している頃はこの手の宿は苦手だった。
その理由は、日本人ばかりで気遅れすることや、
うまくそのコミュニティに馴染めないため。
特にタイあたりの日本人宿は、
ハッパ(マリファナ)をみなで吸っては
大声で騒ぐ彼らのテンションに
到底ついていけなかった。

 

シェア飯と語り明かした夜

ところが中近東まで来ると
バックパッカーの質が変わってきた。
アジアをすでに通過してきただけに
旅慣れていて、どこか大人。
大声で騒ぐこともなく、ハッパもやらない。
イスラム諸国が多いからビールだって
なかなか手に入らないし…。

この宿で出会った仲間もそうだった。
毎日手分けして“シェア飯”を作り、
(シェア飯=お金を出し合って自炊すること)
食後は夜遅くまで語り明かした。
そして、昨夜もまた―。

22時開幕。
「なんで旅してるの?」という
お決まりのテーマを皮切りに、
仕事観や恋愛観、そして人生観を語り合う。
これがまた大真面目。
日本で端からみたらちょっと痛いかもね(笑

ノリは高校生。
旅先ではみな純粋になれる。
時計の針はどんどん進み、
気がつけば空が明るくなってきた。
教会の鐘が鳴る。もう、寝なきゃ…。
疲労感いっぱいの笑顔で、ベッドにもぐりこんだ。

 

旅の引力

3時間後にはベッドから這い出して、
それぞれ思い思いの1日を過ごす。
こんなに睡眠不足でも
忙しく観光にでかける旅の引力たるや。

こんな日々が続いているから、
イスラエルが楽しくて仕方ない。
もう1泊、もう1泊と、
過ぎ去った学生時代を取り戻すように
青春を謳歌している。

「もう飛行機が…」
旅のルートを変更してまで
この宿に残っていたひとりが旅立った。

「俺も明日の朝…」
最初に声をかけてくれたアイツもいなくなる。
それぞれの旅がある。
ここは単なる通過点に過ぎない。
引き止めるわけにもいかず、
「またね」と、玄関まで見送った。

だんだん小さくなっていくザック姿に
自分を重ねながら。
そしてもうすぐ自分の番が―。

ひとり、またひとりと仲間が去っていく。
朝目覚めて、いつもの顔ないのは淋しかった…。
本来なら2泊で旅立つ予定だった。
ヨルダンに戻り、行きたい場所がたくさんあったから。

 

前に進むのが臆病になる

でも…。
ジェラシュを捨て、ペトラを1日に削り、
アズラック、ワディ・ラム、ダハブ…。
あんなに楽しみにしていた場所が
どんどん色あせていく。

もっとここにいたい!

そんな思いの前に…。
何度も書き直した予定表を眺めながら、
よし、と頷いた。
イスラエルに幕を下ろそう。

あとやっておきたいことは
「死海」に行くことと、
旧市街をもう1度歩くこと。
じゃああと2日だ。それで最後。

ひとりで旅してるときは、
なんともなかったのに
たくさんの仲間に囲まれて知った
「淋しさ」
日本を旅立ったときと同じ感情が
胸をキュンとしめつけた。
鈍い、鈍い痛み。
前に進むのが少しだけ臆病になる。

 

日本にいる仲間。
世界で出会った仲間。
日本で再会するのが楽しみだ。
遠くを目指すのではなく、日本に帰るための旅。
それもステキじゃないか。
なんだか旅の意味が変わってきた気がする。

 

旅のカケラ/slideshow

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