![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/MG_1650-1024x683.jpg)
いつもより少し早起きして街に出た。
まだ観光客に荒されていない新雪のような
空気が心地いい。
ヴェネチア、午前7時
![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/MG_1615-1024x683.jpg)
昨日買ったバポレット(水上バス)の24時間券がまだ使えるので
運河をたゆたうことにする。
目的地は決めず、来た船に乗り、気に入った場所で降りる。
肩の力を抜いたエコな旅がいい。
甲板に座ると少し風が冷たかったが、
朝日に向かって走っていくのが気持ちよかった。
ヴェネチア、今度は冬に来て朝霧の街を見てみたい。
![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/MG_1671-1024x683.jpg)
![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/MG_1677-1024x683.jpg)
花の都へ
![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/MG_1615-1-1024x683.jpg)
宿に戻り朝食を済ませ、荷物をまとめた。
そろそろこの旅も終点に近づいている。
今日は水の都から花の都「フィレンツェ」に向かう。
フィレンツェ行きのチケットを買うため、駅の長い列に並んだ。
■ヴェネチア→フィレンツェ
(所要時間:2時間/運賃:40ユーロ ※約5500円)
またしてもユーロスターを買ってしまった。
各駅停車なら料金は3分の1で済むのに
窓口で目的地を告げると迷わず
ユーロスターのチケットを売ってくるから
そのまま受け取ってしまう…。
新幹線ばりに早くて快適だから病み付きになるよ。
![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/0023942-1024x768.jpg)
窓際に座り、カバンから本を取り出す。
大崎善生『ロックンロール』。
パリを舞台に繰り広げられる淡い恋愛小説。
彼の作品の主人公はたいてい40歳で、仕事は編集業。
登場人物はみな影があって、少し心が壊れている。
そんなところに共感を覚えるからだろうか
彼の描く世界にすんなりと溶け込んでいける。
スラスラ読めてしまうので残りページを気にしながら
1行1行大切に文字を追う。
なんだか茶摘をしているような感覚だ。
![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/MG_1905-1024x683.jpg)
ときおり窓の外、トスカーナの景色に目をやり
どこまでもつづくぶどう畑を写真に収める。
物語と自分を重ね合わせ、ため息を1つこぼす。
いくつもの駅を通過した。
物語もまた終点に向かってゆっくりと加速していく。
そしてフィレンツェに到着する少し前に
ほんのりと胸を痛めながら最後のページをめくった。
意識の対岸に流れ続ける、
ユーロスターの車輪の歌を聴きながら――。
![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/MG_1941-1024x683.jpg)
フィレンツェ
![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/MG_1759-683x1024.jpg)
そこは花の都だった。
「フィレンツェ」
なんだか気取って囁きたくなる街の名前。
名前に負けないくらい街は輝いていて
今もなおルネッサンスの華やかな空気が
立ち込めているようだ。
幾多の芸術家や詩人がこの街を愛したことだろう。
小説は書いたことがないが、
もし恋愛小説を書くならこの街を舞台にしたい。
![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/MG_1744-683x1024.jpg)
![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/MG_1800-683x1024.jpg)
ドゥオーモは夏の太陽に煌いていた。
アルノ川に架かるヴェッキオ橋は古めかしくて
中世の香りが残っていた。
街角には絵描きたちがパレットを滲ませ、
キャンバスの街に色を重ねていた。
ヴェネチアとはまた違った美しさを持つこの街に
気分は軽やかになり、
心が優しくほぐれていくのが判った。
旅は人を優しくする。
![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/MG_1826-683x1024.jpg)
![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/MG_1843-683x1024.jpg)
![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/MG_1883-683x1024.jpg)
イタリアの昼は長い。
午後8時を過ぎても夕日はまだ訪れない。
それでも旅の1日は足早に過ぎていく。
こうして今日の物語をベッドの上で綴り、
物語の最後を指折り数えてみる。
また旅が終わろうとしている。
また少しだけ胸が疼いた。
![](http://kaz02.net/wp-content/uploads/2009/07/MG_1935-683x1024.jpg)
コメントを残す