チャイと優しさに、とろりな心

「俺もギルギットへ行くよ」

キルギスから一緒に旅をしているトモが荷物を抱えて現れた。
昨日、フンザを満喫したことでもうこの町に未練はないという。

 

絵葉書から飛び出した絶景

ここパキスタンのフンザはバックパッカーの沈没地で、
過ごしやすい気候と物価の安さ、
そして絵葉書から飛び出したような絶景がその理由だ。
そんな楽園をたったの1日で後にするとは
ずいぶんと思い切ったものだ。

ここを旅の最後の場所に選んだマーさんとの旅は
ついにフィナーレを迎えた。
中国、キルギス、そしてパキスタンと
約3週間に及んだ彼との旅は楽しく、そして多くのことを学んだ。
自分のペースを大切にしているマーさんは、
旅中はあまり人と一緒に行動することがなかったとか。
でも、不思議と息が合ったようで、
「楽しかったよ」と、笑顔で見送ってくれた。

ありがとう――。

さて、今日からはKAZ&トモの新コンビで。

 

目指せ、ギルギット

パキスタンを南下する。
どこの街まで一緒にいられるかは分からないが、
仲間がいる旅は心強いものだ。
ハイエースを改造した乗合バスに
20人もの乗客を詰め込んで
一路「ギルギット」を目指す。
エアコンがない上、ギュウギュウ詰めの車内は
サウナのように暑かった。

 

拍子抜けするほどピースフル

耐えること2時間、パキスタン北部の首都と言われる
ギルギットに辿り着いた。
ギルギットは、日本では「物騒な街」として知られている。
ガイドブックにもよく、
「テロが頻発」「シーア派とスンニ派が対立する」
などと書かれているからだ。
少し身構えながら街を歩いたが、
じとっとする暑さ以外は
拍子抜けするほどピースフルな街だった。

カメラをぶら下げて歩いていたため、
「ハロー、ハロー」と通りを挟んだ先からも声がかかり、
その旅に道を渡って彼らのもとへ駆けつけた。
次から次へともうキリがない。
みんな「写真を撮ってくれ」とせがむのだ。

ムスリムの国なので女性の写真はNGだが、
男性たちはとにかく写真好き。
1枚撮るごとに、違う友人を呼び寄せては
もう1枚パシャリ。
子どもからおじいちゃんまで、
何人撮影したか数え切れない。

一通り記念撮影を終えると
「チャイを飲んでいけ」ともてなしてくれた。
小さなカップに並々と注がれたチャイを
ちびりちびりとやりながら、彼らの輪に加わった。

 

3杯のチャイ

パキスタンの男性たちは本当に少年のようだ。
友人と道で出くわすと、いつも握手で始まり、
パチン!とハイタッチ。そして肩を組んで歩いていく。
キラキラと目を輝かせ、いつも大きなアクション。

結局1日で3杯のチャイと、スイカをごちそうになった。
いい旅してるよね、とふたりで何度も言い合いながら、
とても優しい気持ちに包まれた。

甘いチャイのように、とろりと心がとろける瞬間が
1日に何度も訪れるのだから。

 

旅のカケラ/slideshow

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