癒しのパキスタン

 

昨夜は中国国境の街タシュクルガンで1泊し、
今日はいよいよ9ヶ国目のパキスタンに入国する。

 

カラコルム・ハイウェイ

午前10時、街から数百メートルしか離れていない
イミグレーションへと向かった。
昨日と同じバスに乗っているので、相変わらず乗客は3人。
待ち時間もほとんどなくスムーズに出国手続きが完了した。
中国とパキスタンの国境はフンジュラーブ峠の頂上にあり、
イミグレから50kmほど離れている。
6000m級の山々に囲まれた細い道を、
車体を大きくくねらせながらバスは行く。

山脈を貫くカラコルム・ハイウェイは、
瓦礫に覆われた黒い氷河や山肌が印象的で
7000メートル峰の山々を借景に、氷河のすぐ近くを走っている。
パキスタンと中国を結ぶ道路で、
「世界の屋根」と言われるパミール高原を横切る険路である。

 

ようこそパキスタンへ!

あまりの絶景に、夢中で窓から写真を撮っていると
バスに乗り合わせた中国公安に「NO!」と注意された。
なぜ国境周辺はこうも規制が多いのだろうか…?
パキスタン領に入る手前で、中国公安がバスから降りた。
重々しい車内の雰囲気が一気に明るくなり、
同乗のパキスタン人が「ようこそパキスタンへ!」と、
握手を求めてきた。

峠の標高4000mを超えている。
バスに酔ったか、高山病の兆しか
軽い眠気と頭痛に襲われた。
それでもこの絶景からは目が離せない!
車内を行ったり来たりしながら絶景をカメラに収めた。
峠を越えたずっと先にパキスタン側のイミグレーションはあった。
街の名前はススト。このバスの終点だ。

手続きも非常に簡単で、とてもウエルカムな空気が流れていた。
ここから60kmほど離れた「フンザ」を今日の目的地にしていたので、
フンザ行きのバス停をドライバーに尋ねると、
「この後フンザを通るから乗っていきな」と、
笑顔で答えてくれた。
ただし、出発はドライバーが昼食を摂った後というので、
バスで待つことにした。

 

パキスタンカレー

 

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すると、同乗していたパキスタン人が
「一緒に食事に行かないか?」と、誘ってくれた。
彼が連れていってくれたのはパキスタンカレーの店。
ターメリックライスに2種類のカレーをかけ、
ナンとオニオンスライスを注文。

食後に甘いチャイを飲んだ。
会計を済ませようと、初めてのパキスタンルピーを
財布から取り出すと、
彼はそれを制してこう言った。

「初めてのパキスタンだろ、ご馳走するよ」

日本人に親切だとは聞いていたが、
運転手といい、彼といい、
なぜこんなによくしてくれるのだろう?
厚くお礼を言い、好意に甘えることにした。
マレーシアやタイでも、たくさんの親切や癒しをもらったが、
ここパキスタンはその上を行くようだ。

 

癒しの国パキスタン

フンザに着き、バスを降りて街を歩いていると
道行く人が「日本人かい?」と微笑みかけてくる。
そして握手攻め。
「ハロー♪」とどこか遠くから声が聞こえたと思えば、
丘のずっと上から手を振ってくれた。
重い荷物を担ぎ、道行く人たちに何度も足を止めながら歩いた。

ふいに1台のトラクターが追い抜きざまに停車した。
荷台には6人の若者が箱乗り状態。
そしてみんなで「乗れ、乗れ」と手招きする。
助かった!とばかりに荷台に引っ張り上げてもらい、
くだらないことで大はしゃぎしながら宿を目指した。
宿の途中に彼らの目的地があったため、そこで別れたが、
ものの10mも歩かないうちに
別のトラクターが「乗っていけ」と拾い上げてくれた。

親切と癒しの国パキスタン。

無償の親切はどこからくるのだろう?
イスラムの教えか、国民性か?
無防備に親切を受け入れるのはどうかと思うが、
彼らのくったくのない笑顔を見ていると、
自然と肩の力が抜ける。
たった1日で“大好きな国”になってしまった。

 

旅のカケラ/slideshow

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