風の谷の少年
パキスタンのフンザにいる。
ここの景色は「風の谷のナウシカ」。
切り立った谷の斜面に、いくつもの村が形成されている。
早起きのワケ
昨日はフンザに着いたのが夕方だったので、
村の一部しか見ていなかったが、
それでも感嘆のため息が漏れた。
風の谷をもっと見たい!
そう思って眠ったせいか、
午前5時に目が覚めてしまった始末だ。
気持ちが昂っていると眠気はどっかにひっこんでしまうもの。
いつもこんな風に職場に向かえたらどんなに楽だったことか…。
風の谷を歩く
ここフンザはパキスタン北西部に位置する地域で、
1974年まで藩王国として存在していた。
桃源郷と謳われ、長寿の里として知られる場所である。
バックパッカーにとって憧れの地で、
春の杏の花、夏の緑と山々の景色、秋の紅・黄に染まった木々と
それぞれの季節に美しい景色を魅せてくれる。
朝食はクッキーで済まし、待ちきれず外へ飛び出した。
少し歩いてはシャッターを切る、
もう少し進むと今度は振り返ってパシャ。
もう水前寺清子状態…、3歩進んで2歩下がる
そんなだから、村を1周するのに半日がかり。
昼過ぎにようやく本来の目的地である
「イーグルネスト」という
村を一望できる高台を目指し始めた。
イーグルネストを探して
宿の人の情報によると片道2時間。
1本道だから簡単と、軽~く教えてくれた。
ところが…、迷路のように入り組んだ道や急な斜面、
ここは道?みたいな水路の脇を通り抜ける。
途中何度も道に迷い、すれ違う人に
「ハロー」と「イーグルネスト」を連呼して歩いた。
バルティットフォートという、かつての要塞を過ぎた頃
ふたりの少年に出会った。
10歳くらいだろうか?流暢な英語で話しかけてきた。
「イーグルネストはこっちかい?」(KAZ)
「そうだよ、ついておいで」(少年)
ひとりはスタスタを慣れた道を行き、
もうひとりは何度も振り返って気遣ってくれた。
「ここは古い井戸だよ」
「これは●●っていう花だよ」
「ヤギを飼っている家を見るかい?」
と、いっぱしのガイドだ。
崖を滑り下り、川を渡り、大きな岩をよじ登った。
頭の中には『スタンド バイ ミー』が流れてきた。
30分ほど歩いたあと、木陰でひと息入れて
なぜか元来た道を進みだした。
「イーグルネストはこっちなの?」と訪ねると、
「今日はこれから学校があるんだ。だから続きは明日」
と、ケロっとした顔で言う。
えぇ、そんな…(泣)
谷を抜ける風
さすがスローなアジア。
このゆるさがときどき羨ましくなる。
でもアジアを旅していると、
すぐに「まぁいいか」と思えるから不思議だ。
少年たちと別れ、再び村を散策。
フンザの人はどれだけ日本人好き?と思うほど
「コンニチワ、オゲンキデスカ、アリガトウ」と
知っている日本語の波状攻撃に遭う。
そして必ず握手を求められるか、写真を撮ってくれとせがまれる。
これほど友好的だと、この後のインドでギャップに苦しむかも…?
太陽が西に傾き、斜面の村を満遍なく黄色く染めた。
キラキラと杏の木々がきらめき、
ブルカ姿の女性が光に包まれて神々しい。
そして谷を抜ける風――。
今日もたっぷりと癒しをくれたパキスタン。
明日はこの谷にどんな風が吹くか楽しみだ。
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