国境を越えて――
昨日はキルギスから中国、
そして今日は中国からパキスタンへ。
連日、国境越えのバスに揺られている。
ドラゴンのタトゥー
朝、出発の準備をしていると相部屋のステファンが目を覚ました。
「HELLO GUY」(ステファン)
「おはよう、これからパキスタンに行ってくるよ」(KAZ)
ステファンは36歳のドイツ人。
長髪で青い瞳、右肩にドラゴンのタトゥーがある。
「ワンワールド」という世界一周航空券を持って旅をしている。
彼との付き合いはキルギスのオシュから続いていて、
一緒にジープをチャーターし、中国へと国境を越えてきた。
マレーシアで仲良くなったフランス人のアリ、
いつも陽気で人懐っこいスペイン人のジュリアン、
そしてドイツ人のステファン。
もうひとつの国境越えがいくつもあった。
パキスタンで会おう
「ごめんね、英語が上手く話せなくて…」(KAZ)
「ノープロブレム!」と、みな同じセリフで笑ってくれた。
歯がゆさを覚えながらも、
一緒に過ごした時間はかけがえのない旅の財産だ。
「SEE YOU NEXT COUNTRY(パキスタンで会おう)」と、
固い握手を交わして部屋を出た。
もうすぐパキスタン
さて、パキスタンと聞くと「ちょっと物騒な国」、
そうイメージするかもしれない。
たしかに、アフガニスタン国境やスィンド州はテロが多く、
治安が懸念されるが、多くの街は安全である。
都市に行けば少なからず犯罪が起こるもので
これは日本にも当てはまることだ。
しかし、イスラム教には巡礼者(旅人)に
施しを与えるという教えがあり、親日派の人も多い。
常識的な行動をとっていれば、物価も安く、
旅行者にとって居心地のいい国である。
10時発の国際バスは、2時間遅れで走り出した。
顔半分がヒゲで隠れているパキスタン人ドライバーと、
陽気で親切な補助ドライバー。そして乗客はたったの3人。
1泊2日の国境越えバスがこれで採算が取れるのだろうか…。
車内はこの上ない快適さ。シートを思い切り倒し、
窓からの絶景を心ゆくまで楽しんだ。
「これがカラクリ湖だ」「外で写真を撮ろう」と、
ガイドを買って出る運転手。まるでツアーバスだ。
乗客のパキスタン人が「お腹が減った」と言い出すと、
すぐに近くのレストランに立ち寄るし。
右に、左に、席を替わって
窓からの景色をカメラに収める。
タシュクルガン
いつしか標高は4000m、ジリジリと頭が痛みはじめた。
周囲は標高6000mを超える山々がそびえる。
頭の痛みを堪えながら、夢中でシャッターを切った。
「フィニッシュ!」
両手でバツを作りながら運転手が振り返った。
今日は国境の街「タシュクルガン」で1泊することに。
ドライバーも乗客もみな同じホテルに泊まることになった。
明日の朝、中国・パキスタンの国境を越えて
フンジュラーブ峠、カラコルムハイウェイを走る。
標高5000mという未知の世界。
あの「K2」のすぐ横を抜けていくのだから。
8ヶ国目のパキスタンはもう目の前だ。
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