蘭州から敦煌へ。
列車に揺られること14時間、
ほとんど眠ることができなかった…。
座席の狭さや硬さ、車内の寒さの影響は大きいが、
本当の理由は「莫高窟(ばっこうくつ)」だろう。
敦煌には、あの有名な世界遺産、莫高窟がある。
これを見たい!と思っていたら
もうそわそわして眠れない…。
砂漠の大画廊
毎日のように行きたい場所に行き、
刺激や感動をもらっているのに
人間の欲求というか、
あくなき探究心は尽きないものだ。
さて莫高窟とは。
「砂漠の大画廊」と称される石窟で、
5世紀から実に1000年もの年月に渡って造営された。
現在わかっているだけで492の窟があり、
美しい仏教壁画や仏像が安置されている。
余談だが、
世界文化遺産に登録されるためには
6つある文化遺産登録基準の少なくとも
1つを満たさなければならない。
世界文化遺産は約1000件もあるわけだが、
その中でたった3件、
すべての基準を満たす世界遺産がある。
「ヴェネツィアとその潟」「泰山」、
そして「莫高窟(ばっこうくつ)」だ。
とにかく、ここはスゴイ!ということ。
何度も身体に走る衝動
街からバスで30分、あたりは砂漠へと景色を変え、
そして目指す莫高窟が姿を現した。
この旅でなんど口にしたかこの言葉。
「すっ、すごい!」
尽きない感動、何度も身体に走る衝動。
旅の原動力は、やっぱりこの力だ。
移動の疲れも、寝不足のだるさも
一気に吹き飛んだ!
窓から顔を出して、
吹きつける風と一緒に、
1000年の歴史も吸い取った。
なにかがおかしい???
が!
近づくにつれ、妙に気分が冷めてきた…。
なにかがおかしい???
492あるという窟の入口1つ1つに
ナンバープレートが付けられ、
現代風のドアがある。
まるでマンションの玄関のようだった。
断崖に開削された壁も、
コンクリートでしっかりと補強され、
妙にピカピカと輝いてるし…。
通路には手すりを完備しバリアフリー対策もバッチリ。
この物件いかがですか?
新築マンションの内覧会、
そんな気分に襲われた。
こうして悠久のロマンも、
砂漠の風に散っていった…。
一筋の足跡
もったいないと言われるかも知れないが、
ここまで来ておいて中に入るのをやめた。
外から写真を撮り、
「あぁ、本やテレビで見た姿と同じだ」
もうそれだけで満足だった。
それよりも心惹かれたのが、
莫高窟の周囲に広がるゴビ砂漠。
きびすを返すようにして、砂の大地へと駆け出した。
息が切らしながら砂丘を上り、
仰向けになって
「やったー!」と大声を上げた(何に?)
空は青く澄んで、風は砂つぶてを全身に浴びせた。
振り返ると、一筋の足跡。
この旅と一緒だ。
このまっさらな大地に
どれだけの足跡がつけられるのだろう。
たとえ風に消されてしまうとしても…。
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