ラオス北部で最も旅行者に人気の高い街、
ムアンシンそんなフレーズもどこ吹く風…。
まばらに旅行者が紛れ込んだような
小さな、小さな町だ。
静かな旅立ち
車が通るたびに砂煙に巻かれ、
陽炎ゆらめく乾いた大地が続く。
一緒に旅をしている友人は、久々の優雅な宿を満喫中。
「ここを離れたくない」と言わん顔で夢の中にいた。
起さないようにそっと扉を閉め、
ひとりで夜明けのバスターミナルへと向かう。
独房生活
ルアンナムターからバスで2時間、
さらなる少数民族との出会いを求めてこの街を目指した。
ラオスで過ごす時間も残りわずか。
ラオスキープは外貨に再両替できないので
残り少なくなったお金を逆算しながら、
慎ましい生活が続く。
だから本日の宿は20000K(250円)。
廊下というか、土間をベニヤ板で囲っただけの、
広さ4畳の独房。
心もとない裸電球がぶら下がっていた。
ガラスのない窓からは涼しい風と
大群の蚊が押し寄せてくる。
今夜はバトルになりそうな予感…。
すべてが自由だった
気合を入れてムアンシンに来てみたものの、
とにかくすることがない。
何度も市場に足を運び、木陰でリンゴをかじっては、
我がもの顔で道を横切るウシやブタを見送った。
狙うは翌朝の朝市。
町の郊外にある市場には、周囲の山々から
自慢の衣装に身を包んだ少数民族が集まってくる。
彼らにとっては日常だが、
そんなお祭りにぜひとも参加させてもらいたい。
あぁ、何もない町、何もない時間。
ダラダラというよりは、のびのびと過ごしている。
暑い日中は昼寝をしてやり過ごし
雨が降ればやむまで待つ。
道で見知らぬ人たちと会話をしたり、
何軒も屋台を巡って今晩の食料を調達したり。
すべてが自由だった。
日本にいるときの便利さはないが、
心のままに、ただ過ぎ行くままに人々は暮らしている。
だから、セカセカ、イライラする人をまったく見受けない。
きっと、すべてが自由だから。
こうやってにわか自由を気取りながらも、
この独房のような部屋が心地よく感じるのは、
ちょっと皮肉なものだ…。
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