うううううぅぅぅ…、重いっ!!
空回るタイヤ、ぬかるみに足をとられながら
2時間が経過した。
花の都への道のりは果てしなく遠い…(泣
ぬかるんだ悪路
聖地ラリベラを後にし、
エチオピアの首都「アディスアベバ」に向かう。
ここからバスで2日の旅である。
バス代は106ブル(約1060円)で、
途中「テシエ」で1泊刻むことになる。
もう慣れたが、狭く揺れるバスに乗り込んだ。
午前5時30分、
バスはエンジンは唸り声をあげ
昨夜の雨でぬかるんだ悪路をガリガリと進んだ。
そして2時間後、悲劇は起こった…。
バスは大きく身体を傾け、
ギュルルルとタイヤを滑らせた。
そして黒煙を吐き出し、動きを停めた。
運転手につづいて、乗客たちもバスを降りた。
そして事態を目の当たりにした。
立ち往生
30度ほど斜めになった車体、
タイヤはぬかるみに埋もれ、
大きな溝ができていた…。
脱出不能…!?
あくびと一緒に溜息がこぼれた。
バスの運転手と、バスボーイ2名が
素手でタイヤを掘り起こし、
小石を集めては溝に敷いた。
道はぬかるんでいて、しかも粘着質の泥だった。
1歩歩くごとに靴に泥の重みがのしかかる。
そんな中で3人は必死に作業をつづけた。
運転手がロープを取り出し、
バスの前頭部に巻きつけた。
どうやらこいつで引っ張り出す作戦だ。
ところが、誰もがぬかるみに行くのをためらった。
そりゃそうだ、
こんな早朝から力作業+汚れ作業は勘弁してほしい。
でも、このまま立ち往生では埒があかない。
よし!
ジーンズの裾をまくり、覚悟を決めた。
「引っ張ればいいんだね?」
ロープを手首に巻きつけ、綱引きの体勢をとった。
エチオピア人の男性約10名も志願した。
泥だらけの日本人
運転手がアクセルをふかす。
せーの!
バス相手の綱引きが始まった。
うううううぅぅぅ…、重いっ!!
空回るタイヤ、ぬかるみに足をとられながら
力いっぱいロープを引っ張った。
バスは前進したものの、再び横滑りして
深い溝に落ち込んだ…。
タイヤを掘り起こし、砂利を敷き詰め
ロープで引っ張る。その繰り返し。
いつしか2時間が経過していた。
陽はすっかり高くなり、
時計の針は9時をさした。
汗がにじんだ、
手のひらは泥と油で真っ黒。
靴も泥だらけで重たかった。
何度目のトライだったろう、
掛け声が揃い、やがて大きな歓声に変わった。
やった!!
バスは車体を起こし、ぬかるみから脱出した。
ハイタッチで喜びを分かち合う。
さあ出発だ!と、バスに乗車する際、
エチオピア人たちから
「ベリーグー!サンキュー!」
と健闘を称えられた。
実は一緒に乗り合わせていた欧米人たちは
「俺たちは客だ。
だから俺たちの仕事じゃない」と、
高みの見物を決め込んでいた。
そんな姿を目の当たりにしているだけに
この泥だらけの日本人に対し彼らは優しかった。
遠い都
ぐったりと疲れたが、
すがすがしい気分になり、
バスの乗り心地もすっかり良くなった。
だから、テシエまでの14時間は
ほとんど眠っていた(笑
目が覚めるとすっかり夕方で、
バスは依然激しく揺れていた。
手のひらには乾いた泥がこびりついていた。
いざ、花の都へ―
テシエで1泊し、明日、
再び早朝5時のバスに乗り込む。
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