不思議の城と、天使たち

午前4時、外は真っ暗だった。
眠い目を擦りながら身支度を整える。

 

夜明け前のバス

ここメテマは電力事情がよろしくなく、
17時~22時までしか電気が通っていない。
ヘッドライトで照らしながら、荷物をまとめ
まだ肌寒い、夜明け前の町へと繰り出した。

 

エチオピアは、バスが1日に1本しかなく、
しかも出発は早朝5時半…。まったく早すぎる。
出発の1時間前にバス乗り場に着いたが、
車内はほぼ満席!
5人がけの最後尾のシートに6人で座る羽目になった。
そりゃあ1日1本だもの、みんな必死だ。
ちなみに運賃は60ブル(約600円)。

 

何のアトラクション?

国境の町メテマから
「ゴンダール」へと向かうわけだが、
道がすこぶる悪く、
未舗装の悪路を約6時間走る。
バスの最後尾はとにかくよく跳ねた。
ガタンと大きな音を立て、
荷物を抱えたまま宙を舞う。
まるでトランポリン状態。
勢い余って天井に頭をぶつけたくらいだもの…。

これは一体何のアトラクション?

そう呟きながら、飛び跳ねては
周囲の人たちと顔を見合わせて
「今のはスゴかったね」と笑った。

車窓に広がる景色は美しかった。
エチオピアは緑が多い。
1つ山を上るたびに、
北海道の美瑛のような
パッチワークの丘が眼下に広がる。
相変わらずのトランポリン状態の中、
身を乗り出してシャッターを切った。

空が青かった―。
雲が近かった―。
でも、おしりは痛かった…(笑

 

ゴンダール城

正午過ぎにゴンダールに到着した。
ゴンダ-ルはアフリカの「キャメロット」と呼ばれ、
17世紀にはエチオピアの首都として繁栄した。
早々に宿を決め、
世界遺産にも登録されている
「ゴンダール城」へと足を運んだ。

ファシリデス王の城跡で、
なぜ、アフリカに中世ヨーロッパと
見紛う城があるのか?
そのため、ゴンダール城は
「不思議の城」と呼ばれている。

城に着くや否や雨が降り出した。
2ヶ月ぶりの雨は、
アフリカの大地を潤し、
冷たい風を運んで身震いさせた。

 

しばし、城内で雨宿りし、
青空の回復を待った。
1時間で雨は止み、
さっまでの雨が嘘のように
澄みきった青空と、秋の雲を連れてきた。
城は青空によく映えた。

 

エチオピアの天使たち

さらに街を2kmほど歩き、
「デブラ・ブラハン・セラシェ教会」を目指した。
天井に描かれた天使の絵は、とても有名で、
80の天使が天井を全て覆っていた。
エチオピアの天使は身体がなく、
大きな瞳と広げた翼が印象的だった。

帰り道、
子どもたちが長縄跳びをして遊んでいた。
「入っていいかい?」
と両手で指差し、弧の中に飛び込んだ。
1回目は失敗…。
「もう1回、もう1回!」と催促し、
今度はタイミングをしっかり図って
ジャンプ!!
久々の縄跳びだったが、
身体がリズムを覚えていた。

「どんなもんだい!」
誇らしげに笑顔を向けると
子どもたちは回転を早めてきた。
負けるもんか!
クルクルと身体をひねりながら、
さらには目をつぶって、跳び続けた。

弧から抜け出し、息を整えていると
「もう1回やって」と、アンコールがかかった。
じゃあ、期待に応えて
1、2、3、4…
息を切らしながら、夢中で跳んだ。

ハァハァ、ハハハ(笑

辛くて笑いがこぼれた。でも楽しかった。
さっき見たエチオピアの天使を思い出した。
そして、ここにも天使はいた。
翼はないけど、笑いながら飛び跳ねている。

いいな、エチオピアって♪
また1つアフリカの先入観が崩れていく。

 

旅のカケラ/slideshow

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