仏の顔も●度まで…

インドの旅もいよいよ終盤に差し掛かっている。

ここはヴァラナシ。
北インド観光のハイライトというべき場所だ。
聖なる川ガンガーは、今日も静かに流れていて、
この慌しい旅を「そんなに焦るな」と諭しているようだった。

 

サールナートを目指す

さて、今日は四大仏跡のひとつである「サールナート」を目指す。
あいにく相方のヒロは遺跡や観光があまり好きではないので、
ひとりで出かけることにした。
朝方から降り出した雨も上がり、幸先がいい。

サールナートとは、
ブッダが初めて説法をした「初転法輪の地」である。
ヴァラナシから約15kmのところにあり、
ヴァラナシ駅からミニバスが出ているというので
まずは駅へ向かうことにした。

街角でリキシャをつかまえ料金交渉。
30ルピー(約80円)で話はまとまった。
いつものことながらインドのリキシャは
一筋縄ではいかない。

走り出すとすぐ、
買い物をしていかないか?
「NO!」
雨のせいで道が悪い。やっぱり40ルピーだ。
「NO!」
サールナートへのバスは値上がりした。このままリキシャで行こう。
「NO!」
せっかく気持ちよく出発したのに、イライラさせる奴らだ。

もういい!

リキシャを飛び降り、バーイと手を振った。
慌てて追いかけてくるリキシャ。
「ちょっと待ってくれ…」と、必死でわめいている。

 

空気を読めない

一切振り向かず、彼を無視して他のリキシャと交渉を始めた。
すると、「20ルピーでいいから乗ってくれ」
悲鳴にも近い声が飛んできた。
不機嫌な顔でもう一度リキシャに乗り込み、
「20ルピー、約束だよ!」と念を押した。

でも、さすがに可哀相なので駅に着いたら
10ルピーをチップとして払ってあげようと思っていた。
そんな空気を読めないのがインド人である。
しばらく走っているうちに、次の値上げ交渉が始まるんだから…。

渋滞を迂回したから距離が伸びた。もう10ルピー追加してくれ。
「NO!」
もう足がパンパンだ、普段なら40ルピーの仕事だ。
「NO!」
舌の根も乾かないうちに!
おい、君らの頭はどうなってるんだい??

駅に着き、日本人としての情けで最初の言い値であった
30ルピーを手渡すと、
「せめてもう10ルピーだ」と、不服そうな顔でせがむ。
じゃあ、交渉決裂だ!
支払った30ルピーを彼の手から奪い取り、
再びバーイと手を振った。

またしても泣きそうな声で、「ソーリー、ソーリー」と繰り返す彼。
少し懲らしめてやろうと思ったが
やっぱり可哀相に思えてきてしまい(甘いよなぁ)
不機嫌な顔のまま「しっかり仕事しろよ!」と、
30ルピーをシートに叩きつけた。

あー、もう…。
今日もやってしまった。彼らとのバトルが日課となりつつある。
とにかくバスに乗り込み、サールナートへと向かった。

 

荒んだ心が潤ってくる

バスは約30分の乗車で、料金は8ルピー(約20円)。
隣の人が「サールナートだよ」と合図をくれ、無事に辿り着いた。

 

そこは緑が美しい遺跡公園だった。
かつてブッダが、ともに修行していた5人の修行者に出会い、
彼が悟った真理を初めて語った場所。
初めて「言葉」になったその教えは、
後に世界中の人々の心に染み渡ることになる。

人はなぜ存在するのか?
人はどう生きていくべいなのか?

ぜひとも耳を傾けてみたい内容だ。
人も疎らで、とても静かな公園だった。
巨大なストゥーパや遺跡のあと。
悠久の風を感じていると、
日々荒んでいく心が潤ってくるようだった。

あぁ、来てよかった。

明日は移動日。ブッダ・ガヤーを目指す。
順番は前後するが、ブッダが悟りを開いた場所である。
ブッダがひとり歩んだ道を、そっとなぞってみる。
不思議な引力を感じながら、
自分なりの“気づき”を求めて。

 

旅のカケラ/slideshow

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です