栄枯盛衰

もうひとつの銀鉱山の町「サカテカス」。
先日訪れたグアナファトは世界の3分の1の銀を産出した
世界でも有数の銀鉱山を誇る街だったが
サカテカスもまた銀で巨万の富を得た貴族の夢の跡である。

 

ブーファの丘

街歩き、まずは銀鉱山「ブーファの丘」へ向かう。
丘へのアプローチはロープウェイ。
眼下に広がる旧市街の眺望を楽しみながら7分間の空中遊泳だ。

街全体がメキシコ特有の赤みがかかった砂岩で築かれているので、
ぼんやりとピンクの色調であることに気づく。
“ピンクシティ”と呼ばれる所以だ。
そういえばインドのジャイプールも
ピンクシティと呼ばれていたっけ(懐かしい

風の丘に座りコロニアルな街を見下ろす。
銀貴族の夢の跡…か。
風に吹かれていると、丘の上にある教会から歌声が聞こえてきた。
陽気で、春の匂いがする澄んだ歌。
そのメロディが心をくすぐり、眠気に似た安堵感を連れてくる。
ひだまりにいるみたい。

春、日曜の午後、カーステレオから流れる静かなFMラジオ、
そんな連想が頭をよぎった。
上手く言葉にできないが、懐かしくてくすぐったい感じ。

 

坂のある街

銀鉱山の採掘現場を見学しようと「エデン鉱坑」を訪れたが、
新型インフルエンザの拡大を防ぐため
メキシコは現在、あらゆる施設に対して
5日間の業務停止命令が出ていて
ここもまた6日まで閉鎖中と張り紙がされていた。

ロープウェイは片道27ペソ(約220円)。
帰りは節約のために歩いて街まで下ることにした。
サカテカスは谷あいの街なので、全体がなだらかな坂道。
街中に張り巡らされた細い階段を下っていると広島県の尾道を思い出す。
そうそう、こんな感じ。

 

圧巻な建築美

今日も再びカテドラルを訪れた。
何度見ても圧巻な建築美!
正面入り口に施された彫りの深い独特の装飾は
メキシコ・コロニアル建築の代表作とれるチュリゲーラ・バロック様式。

スペイン文化とメキシコ先住民の融合した作品で、
少なからず衝撃を受けた「石が造り上げた夢」。
石をこれほど柔らかく表現した技術は驚きである。

20世紀の初め、銀鉱山の衰退が急激にサカテカスの経済を圧迫する。
その経済的な没落によって人々から見離された結果、
旧市街の歴史建築が当時の姿をそのまま残すこととなったそうだ。

「世界遺産」
この言葉の影には平家物語のような
“栄枯盛衰の物語”が刻まれている。

結局、カテドラルには3度足を運んだ。
ラストはライトアップされた姿を見に。
カラン、カラン、カラン…鐘が時を数えた。
「祇園精舎の鐘の声……」
平易で流麗な名文、平家物語の書き出しとリンクする。
「ただ春の夜の夢の如し」

 

いや、いい夜だよ。
静かで、穏やかで、日本と同じ春の夜。

 

旅のカケラ/slideshow

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