ヨルダン、最後の聖戦

砂漠の真ん中に「幻の都」があった。

映画『インディー・ジョーンズ 最後の聖戦』
ロケ地としても一躍有名になった
世界遺産「ペトラ」である。

 

まるで蜃気楼…

ヨルダンの砂漠には巨岩、奇岩が多く見られ、
ペトラの都はその岩に覆われるような場所にある。
そのため砂漠からは全く見えず、
幻の都とされてきたゆえんがここにある。

「シク」と呼ばれる細長い岩の谷間を通り、
期待に胸を躍らせながらいくつカーブを過ぎただろう、
その衝撃は突然やってきた。
まるで蜃気楼…、荘厳な霊廟が姿を現した。

「エル・ハズネ」

高さ43m、岩壁に彫り込まれている。
宝物殿とも呼ばれていて、
中央の壷の中には財宝が隠されていると
信じられてきた。

このエル・ハズネは、光の加減により
1日に50色以上のバラ色を見せるとか。
オレンジがかった美しい発色と、
なめらかな流線美にしばし時を忘れた。

 

人は欲深いもの

この旅でたくさんの絶景に出会ってきた。
不意に出会うモノもあれば、
それが見たくて足を運ぶモノもある。
たいていの場合、期待をしていくと
「なるほどね」という感想に治まる場合が多い。

これはラーメン屋と同じ現象かもしれない。
旨い!と評判の店に行き、
1時間も行列に並んだとしよう。
苦労の末、その1杯を口にした瞬間、どう思う?
たいてい、「こんなもんか」と心で思いながらも
自分を労う意味で「旨い!」と、
自己暗示をかけていないか?
もしくは、こんな味でみんな満足してるとは
レベルが低いぜ!と、開き直って
孤高の人を演じてしまわないか?
どちらも淋しい結末である。

人は欲深いもので、
自分の中で期待値をどんどん高めてしまう。
世界遺産、映画の舞台、地球最後の…、
そんな枕詞によって。
さらに入場料がその感情に拍車をかける。
高い金額を払えば払うほど、
その対価を求めて心のバーをより上昇させる。

ペトラは世界遺産の中でも、
相当に絶賛されている遺跡である。
入場料も現地の物価を考えるとべらぼうに高い。
(ちなみに21ディナール ※約3500円)
じゃあ、ペトラを見て、
どうだったかというと

「期待どおり」
これが率直な感想だ。

 

期待どおり

うーんと期待して行ったけど、
その期待値に応えてくれた。
うーんと高い入場料にも負けない
感動を用意してくれた。
何度もテレビや本で見たことあるし、
みんなから話も聞いていた。
それでも、ペトラは裏切らなかった。
だから「期待どおり」。
もちろん賛辞を込めて。

実は最近教えられたことがある。
有名な観光地に行ったとき、
これと同じ話をしたことがあった。
期待を超えることは難しいよね、と。
するとその人はこう言った。

「たしかに感動はするけど、予想以上のものではない。
でも、一緒に見たという大きな意味があるよね」

ガツン!と胸を打たれた。
実にさり気なく、そう言ってのけた。
何を見るかではなく、誰と見るか。
なんてシンプルで、なんて大切なことだろう。
いつも遺跡を見るときは、
悠久の時に思いを馳せたいから
ひとりで動くことが多かった。
時間を気にしなくていいしね。
だからそんな考え方があることを忘れていた。

 

ペトラの感動

今日のペトラは
宿で出会った大学生と一緒に行った。
彼との歳はひと回りも違うが、
話はよく合う。
だって、彼は柔軟で頭のいい青年だから。

くだらない冗談や素直な感想を口にしながら
ペトラと対峙した。
実にリラックスした気持ちで
感動を迎え入れることができた。

ペトラの感動は「期待どおり」。
彼との時間はこれから時間が経つにつれて
色濃い思い出へと変わっていくだろう。
どちらも忘れられないものとして。

というとこは、
旨い!と評判のラーメン屋には、
大切な誰かと行くといいのかもね(笑

 

旅のカケラ/slideshow

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