色彩豊かなニースはフランス人の憧れであり、
多くの芸術家が愛した土地である。
サンサンと降り注ぐ太陽のもと、
国数を稼ぐべく列車に乗り込んだ。
モナコ公国
目的地は「モナコ」である。
フランスの列車はSNCFと呼ばれ、
世界最速のTGVやユーロスターなど様々な種類がある。
ここニースからモナコまでは急行列車で15分と驚くほど近い。
運賃は3.1ユーロ(約400円)だった。
というわけで、
56ヶ国目「モナコ」に到着♪
もちろんモナコは国である。
面積はわずか1.95平方㎞と世界で2番目に小さな国。
人口は3万人で、純粋なモナコ人は4000人足らずだとか。
治安の良さは世界一で、
64人に1人の割合で警官が配備されているそうだ。
モナコといってイメージするものはやはりカジノ。
この国はリッチで華やかなイメージが強い。
かの『深夜特急』では沢木耕太郎がカジノに挑もうとしたが
正装でなかったため門前払いを食らっている…。
立体構造のまち
モナコ・モンテカルロ駅は地下にあった。
長いエスカレーターを進み、
さらにエレベーターに乗り換えて地上に出る。
モナコは断崖に造られた街で、
急な斜面に高層ビルが立ち並び、
立体構造によって狭い国土をカバーしていた。
街中にエレベーターが備えられていて
近未来都市という感じがした。
高級クルーザーが停泊しているモナコ湾を望みながら
まずは大公宮殿へと向かった。
ここはモナコ公国歴代君主の居城で、
宮殿前のパレ広場では毎日正午に衛兵の交代式が行われる。
宮殿の周囲は旧市街が広がっていた。
細い路地にショップやレストランが軒を連ね、
迷路のように入り組んでいた。
相変わらず街歩きは楽しい。
中南米で中世のヨーロッパを彷彿とさせる街並みを見てきたが
本場はさらにその上を行く。
これはもうリアルな“ドラクエ”である。
ル・カジノ・ド・モンテカルロ
つづいて向かった先は「ル・カジノ・ド・モンテカルロ」。
モナコの象徴といえる場所だ。
パリのオペラ座を手がけたシャルル・ガルニエによる建築で
宮殿のような煌びやさがある。
Tシャツにジーンズなので入場は断念し、外観を眺めて満足した。
カジノの正面にはフェラーリをはじめ、
見たことのない高級車がよこづけされていて
観光客はカジノよりも車の写真を撮っていた。
たぶんその様子を車の持ち主が満足気に眺めているのだろう。
頃合を見計らって颯爽と乗り込みエンジンを吹かした。
これぞモナコ流のステータス!
見ていて嫌味がないのは彼らが本当の紳士だからだろうか。
モナコは想像以上に楽しい場所だったが、
物価の高さには苦しめられた。
だって大好きなコーラが900円!だもの…、
ここに住んでいる人たちはいったいどんな生活を送っているのやら。
マントン
再び列車に乗り込み、モナコを後にした。
次に目指したのは中世の面影が残る“鷲の巣村”。
中世の混乱期に村の安全を守るために
山の山頂や中腹に築かれた村のことで
イタリア国境にほど近い「マントン」を訪ねた。
ここは中世の姿を色濃く残していて、
石畳の細道が張り巡らされていた。
高台からは地中海が望める美しい場所で、
モナコとは違った風情を感じた。
どちらかというとこちらの方が好みだ。
太陽の恵みあふれる南仏の旅は
浮かれ気分の中にも実は焦りがある。
嘘のように美しい景色や美食に触れるほどに
祭りの後に訪れるあの喪失感が怖い。
世界一周の旅を終えたあとも
心の底が抜け落ちたような妙な感覚に陥った。
手放しで華やかなカーニバルを楽しめない自分。
あぁ、もったいない…。
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