魔女の宅急便?

朝起きると、えっ8時30分!?
急いでシャワーを浴びた。
別に何か特別な用事があるわけでもないが、
窓の外はありえない絶景。
もったいなくて寝てられない。

 

風の谷のナウシカ

シャワーを浴びて再び時計を見ると、
あれっ?まだ6時??
どうやら5時30分を8時30分と勘違いしたようだ。
旅立って3ヶ月、未だに毎日が新鮮で刺激的。
いい緊張感と興奮が持続している。

せっかく朝のスイッチを入れたので、
少し早いが宿の食堂に向かい、
トーストとチャイをオーダーした。
(ちなみに30ルピー※約50円)
バターとたっぷりのアプリコットジャム、
そしてとろけるようなチャイで、身体がほぐれていく。

風の谷「フンザ」の朝はとにかく静かで心地いい。
食堂には『風の谷のナウシカ』が置いてある。
物語のモチーフになった場所と言われているのでこれは粋な計らいだ。
チャイをすすりながら読みふけると、
時計の針は10時を指していた。

さて、そろそろ出かけようか?と思った矢先、
ひとりの日本人バックパッカーがやってきた。
ぽつりぽつりと会話を交わすうちに
イランビザの取り方やカメラ談義に華が咲き、
旧知の仲のように、時間がどんどん過ぎていく。
結局昼食を供にし、再会を約束して握手で別れた。

 

荷物の整理

さぁ、今度こそ出かけなきゃ!

明日はギルギットという街へ移動するため、
今日が最後のフンザ。たくさん写真を撮っておきたい。
実はひとつだけ今日中に済ませておきたいことがあった。
バッグが37kgと尋常じゃない重さだったので、
今後の過酷な国々を考えると少し減らしておきたい。
断腸の思いでフィルムカメラ2台と、
ここまでほとんど出番がなかったアイテムたちを
日本に送り返すことに決めた。

箱に荷物をつめ、郵便局へと出かけた。
ここの郵便局は窓口がなく、
ドアを開けると、机を3つ並べてのんびりと仕事をしている。
カスタムを受け取り、さてどこで書こうかと思っていると
局長らしき人物が、こっちに座りなさいと、
自分の席を譲ってくれた。
フンザの郵便局で、局長席に座って書類を書いている、
なんともおかしな絵だ(笑

 

スローな郵便屋さん

ここパキスタンでは、
荷物を白い布で梱包しなければいけない。
郵便局員に連れられ向かったのはテーラー屋だった。
ガタガタガタと、古いミシンを起用に扱う店主。
古いシーツを縫い合わせ、箱を包む袋を仕上げていく。

その様子をじっと待つこと1時間。
ミシンの音にあわせて、ウトウトとリズムを刻んでいた。
荷物を布で包んでもらい、郵便局へ戻ると
局長が「いい感じじゃないか」と、言わんばかりの笑顔で迎えてくれた。

はかりで計量する間、再び局長席に座らされ、
「チャイは好きかい?」と、
塩味のしょっぱいチャイをふるまってくれた。

スタンプやらバーコードやら、白い布にぺたぺたと貼り終えると
「これでOK!」と、局長に肩を叩かれた。
あとは“魔女の宅急便”に任せるとしよう。

サンキューと、郵便局を出るとすでに時刻は16時。
うーん、小包ひとつ送るのに3時間か…。
こうして何もなく、カレンダーがまた1枚落ちた。

 

出会いと別れ

でも、このゆるい感じがフンザのいいところなのだろう。
夕方、2日遅れで中国のカシュガルを経った
旅先で知り合った友人のマーさんが宿にやってきた。
たった2日でも懐かしく感じるし、
異国で再会するというシチュエーションには
ぐっとくるものがある。

「せっかく再会したんだからもう1日いろよ」

そのひと言に、フンザの滞在延長を決めた。
彼はこのあとすぐ帰国するので、
明日が一緒に過ごす最後の時間。
旅の中では、たくさんの人との出会いと別れがある。

今日の再会は、風の谷がくれた
もうひとつの“魔女の宅急便”だった。

 

旅のカケラ/slideshow

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