「ふざけんな!」(マーさん)
「偉そうにヒゲなんかはやして、なんだよ!」(Sさん)
トライバーの胸ぐらをつかんでツバ競り合い。
なんとも後味の悪い結末だ…。
思い返せば、今日も朝から振り回されっぱなしだった。
イレギストラーツィア
朝イチでイレギストラーツィア(外国人登録)へと向かった4人。
メンバーは、マーさん、ともちゃん、Sさん、そしてKAZ。
キルギスなんていうマイナーな国なのに、
中国から渡ってきた日本人が大集合した。
軽くメンバー紹介。
マーさんは昨日のブログでも登場しているが、
パフォーマンスをしながら8ヶ月旅を続けていて、
次の国パキスタンで旅を終えるという。
ともちゃんは民族衣装を勉強するために中央アジアを旅している。
浴衣とお茶の道具を持っている穏やかな女性。
Sさんは御年61歳。
奇数月は「仕事をしない」がポリシーの
筋金入りのバックパッカー。
旅先でしか絶対に交わらないメンバーで
今、キルギスを旅している。
イレギストラーツィア(外国人登録)では、
あっちのオフィスへ行け、あの銀行でお金を振り込んで来い、
パスポートのコピーがないぞ。
さんざんたらい回しにされたあげく、
全部の書類を揃えてオフィスへ行くと
「ボスは今、買い物に出かけている」だもの…。
大移動、はじまる
今日はキルギスのオシュから
首都ビシュケクへと、800kmの大移動。
イレギストラーツィアで手間取ったせいで
大慌ての出発となった。
昨日手配したタクシーに乗り込もうとしていると
N氏が苦い顔で現れた。
「ヤバイ、国境が閉鎖してる」(N氏)
中国のGWがスタートし、
それに合わせて陸路の中国国境が閉鎖されてしまった。
なぜ国境を閉鎖する意味があるのか?その真意は不明だ…。
N氏は59歳。大手企業に勤めている短期旅行者。
彼もまた、筋金入りのバックパッカーで
今でも時間を工面しては貧乏旅行を続けている。
5月5日にウルムチから日本へ戻る航空券を持っているのだが、
キルギスから中国へと戻るルートが
閉鎖されてしまい途方に暮れている。
「ビシュケクなら国際線があるから、
モスクワかロンドン経由で日本に戻ろうかと…」(N氏)
そんな彼が急遽加わり、
5人のメンバーでビシュケクを目指すことに。
たどり着いた首都
ヤギや羊の群れを追い抜き、
輝く湖を数えながら峠を越える。
いつしか景色は白銀の世界に変わり、
空は茜色に染まった。
12時間、ようやくビシュケクの入口へと辿り着いた。
そして事件が勃発した。
宿はどこだ?とドライバーが問う。
キリル文字で書かれたガイドブックを彼に手渡す。
どうやら場所がわからないらしい。
車を停め、近くのタクシーに聞きに行った。
待つこと5分。
別のタクシードライバーを引き連れて帰ってきた。
「ノー プロブレム」を連呼し、100ソム(約300円)を払って
別のタクシーで行けと言い出した。
はぁ?
彼の言い分はこうだ。
ここはビシュケク。俺はオシュから
ビシュケクまで乗せたからノルマは果たした、と。
こんな街外れに落とされて、位置関係もわからない。
あきらかに職務怠慢ではないか!
彼には英語がほとんど通じない。
ニタニタと笑いながらキリル語で彼の言い分を繰り返す。
そして知っている英語は「ノー プロブレム!」だけ。
温厚な日本人5人が英語、ロシア語で文句をいうが、
ただニタニタと笑ってごまかすばかり。
もういい!
宿探し
最低の気分で別のタクシーに乗り込んだ。
握手を求めてきたその手を振り払って。
タクシーでたったの5分。目的の宿は意外に近かった。
お金を払おうと100ソムを手渡すと、
「120ソムだろ?」とつっぱねる。
お前もか…。
どんどんキルギスの印象が悪くなる。
あんなに美しい景色を楽しんだ後だっただけに
残念な気持ちでいっぱいだった。
「ここに100ソムって書いただろ!」(KAZ)
ノートを突きつけたが、両手を広げてまだシラをきる。
無理やり100ソムを握らせ、背中越しに手を振ると、
なにやら罵声を発しながら、車のドアを激しく閉めた。
後味悪っ…。
5人でひとつの部屋を借り、
口々に文句を言い合ってストレスを発散させた。
でも、日本じゃ絶対ありえない組み合わせの5人に
思わず顔を見合わせて笑ってしまう。
親子のような、親戚の集まりのような…。
おかしな5人で、キルギスの旅はつづいていく。
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