さて本日は移動日。
ルアンパバーンを後にし、
ルアンナムターという街を目指す。
安定の遅延バス
午前9時のバスに乗り、
目的地までは9時間のバス旅である。
すでに2回、ラオスのバスに乗っているので
「定刻どおりに着くはずがない」
ことは知っている。
食料を買い込み、防寒着の準備も怠りない。
ガタンと、大きく深呼吸し、その後ドクドクドク…
と黒煙と砂埃を巻き上げながら走り出す。
今日はテレビ付き。
大音量のカラオケ映像が延々と流れ出した。
車窓のスクリーン
スタローンのようなサングラスをかけた運転手は、
山をひとつ越えれば、ネスカフェを買い
また山を越えれば、パパイヤを買い
もひとつ山を越えたら、
今度はフーナーム(麺料理)を食べに走った。
それが彼の楽しみ方なのだろう、きっと。
やっぱり昼間のバスは気持ちがいい。
窓を目一杯あけて、息ができないくらいに風を吸い込む。
さあ、車窓のスクリーンには、
レトロな映画を見るかのような景色が始まっている。
自転車で駆ける少年に無言のエールを送り、
犬と戯れる少女には微笑みを。
井戸端会議中のおばさんが、
タケノコを売るおじさんが、
大きく手を振る。
ならばと、窓から身を乗り出して手を振り返す。
そういうものさ
親鳥の影でエサを啄むヒヨコの群れ。
バスにびっくりして草むらに飛び込むイノシシ親子。
昼寝を邪魔されてふて腐れる大きな水牛。
ラオスではあたりまえの景色がとっても目新しく感じて楽しい。
日本にもこんな時代、こんな景色があったのだろう。
今と昔、どちらが幸せなのかは分からない。
この国もいずれ、日本と同じ景色に追いつくのだろうか?
それとも、このままが幸せなのだろうか?
そんなことを思いながらバスは走った。
旅に出て、日本で流れていた時間から逸脱した自分。
今の状態は、日本という時間においてかれているのか?
それでもいいや。バスや電車に1本乗り遅れたって、
必ず目的地には着けるのだから。
行き先さえ見失わなければ、
この旅も、この人生も幸せな結末へと走っていけるはず。
同じように、このバスも3時間遅れて目的地に着いた。
「そういうものさ」
ちょっと誇らしげな顔で運転手はサングラスを外した。
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