真夜中の侵入者

時刻は深夜4時。
いつも事件は突然やってくる。

「小腹がへったなぁ、コンビニでも行く?」
何気ないこの一言から物語は始まった。
隣人を起こさないようにそぉ~っと部屋のドアを閉め、
忍び足で階段を降りる。

「鍵持った?」(KAZ)
「え?持ってるんでしょ…?」(HIRO)
「いや、ないないっ!」(KAZ)

……。固まるふたり。

普通のホテルならいざ知らず、ここはゲストハウス。
管理人も自宅に帰ってしまっている…。
仕方ない、とりあえずコンビニでも行こうか。
苦笑いを浮かべ玄関に向かった。

バリバリバリバリバリバリ!!!!!
激しいバイク音が鳴り響いた。
えっ、暴走族?絡まれたら嫌だな…。

オウオウオウオウオウオウ!!!!!!
激しい犬の遠吠えが鳴り響いた。
えっ、野犬の群れ?
襲われたら嫌だな…。
なんて物騒な街だよ…。

 

侵入を試みる

こんな状態じゃ外に居られやしない。
急いで部屋の前に戻り、
ダメもとで鍵穴に針金をつっこんでみる。
金庫破りを試みるが、当然空くはずもない…。
大量の蚊が飛び交う玄関のロビーで寝るしかないか。

そのときだった!
「WHAT ARE YOU DOING?」
隣の部屋の人が帰ってきた。
カタコトの英語で事情を伝える。

「じゃあ僕の部屋から屋根づたいに行けば?」(隣人)
なるほど、窓から入れるかも!?
裸足になり、恐る恐る屋根を歩く。
2階の部屋だったのが幸いだ。

そして部屋の前。
希望を込めて観音開きの窓を押す。
ミシミシ…。鍵がかかっていた。
でも、僅かに隙間は空いた。
「思いっきり押しちぇえ!」
と、隣人は強行突破を指示する。
マジで? えーい、ゴメンなさい!
バキっ…!

鈍い音を立てて簡易式の錠が外れた。
隙間に身体をねじ込み、
部屋の中に転がり込んだ。
ふうぅ、やった、やったよ…!

置き忘れた鍵を握り締め、
内側から鍵を開けた。

今は深夜、ここはタイ。
こんな真夜中の喧騒も、
タイの蒸し暑い夜が吸い込んでくれる。

 

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