旅立ちの朝

 

世界一周の旅がはじまった

出発の朝。
筋雲爽やかな快晴は、この旅へのエールか。
きらめく水面、優しい日差し。
あまりの穏やかさに、過酷な旅へのはじまりが少しぼやけた。

空港のロビーでのんびりとチャイをすすり、
はじまりの地、シンガポールへのフライト時刻を待った。
まさかこのあと、
未曾有の事件に巻き込まれることになろうとは…。

 

 

まさかの重量オーバー…

チェックインカウンター。ここに魔物は潜んでいた。
担いだザックを降ろし、重量計へ。
無機質な数字が指したのは「26kg」。

えっ…(冷や汗)

最近はこのザックに慣れていたせいか、
まさかこんなに重たいとは。
冷やかな顔でこう告げられた。

「超過料金23000円になります」(スタッフ)

えぇぇぇっ!!!(青ざめる)
に、2万3000円ですとっ!?

 

航空券が4万円なのに対し
荷物が6kgオーバーで23000円の追加…。
しかもこの旅は1日18ドルが予算という
まったく予断を許さない貧乏旅行。
この出費は幸先が悪すぎるって!

「ちょっと荷物を詰め替えていいですか?」
「OK、でもあと5分しかありませんよ。
手荷物も10kgまでですよ」(スタッフ)

ヨーイドン。さぁ闘いの幕が切って落とされた。
さっきまでの穏やかな時間はどこへやら。

 

華麗な旅立ちが冷や汗に…

ボクサーよろしく、額に汗しながら6kgの減量に励む。
特に重たいのはガイドブックと一眼レフ。
この2つをあきらめれば クリアできる数字だが、
その代償はあまりに大きい。
さぁ、どうする?

まず紙資料の束をあきらめ、
機内で読もうと思っていた小説もポイ。
そして泣く泣くガイドブック6冊を抜き取った。

再び計量へ。

「19.7kg」

やった!
まさにミラクルな数字で初戦を突破した。

続いて手荷物。

「11.3kg」。

しかし1.3kgオーバーにも、
「OK!」と、判定勝利をもぎとった。

 

さぁ、旅立ちの時

 

ありがとうノースウエスト航空さん。
そしてごめんなさい。
実はそんな好意を尻目に、
さっき抜き取ったガイドブックを
再び手荷物に戻しちゃいました、ハハハ(苦笑)

あー、もう最悪なはじまりになったよ。
感動的な別れのシーンのはずが空港内を走り回り、
荷物をひっくり返してドタバタ劇場…。

チェックインが済むと
すぐに今度はファイナルコールが急きたてた。

「じゃあ、行ってきまーす」

破れかけた紙袋を引っ下げて
前途多難な旅が今はじまった。

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