ホテルの屋上にあるレストランで朝食を摂った。
ここ『キリマンジャロ・バックパッカーズ』は、
朝食付きでシングル1泊7ドル。
部屋は清潔だし、ホットシャワー完備だし、
いい宿を見つけたものだ。
キリマンジャロ
街が見下ろせる席に座り、
たっぷりとイチゴジャムを塗った食パンを齧りながら
何気なく眺めた景色に驚いた。
「キリマンジャロだ!!」
白く霞んだ空に万年雪の頂がぼぉ~っと浮かんでいる。
幻のような、今にも消えそうな…。
手前のビルやアンテナが邪魔だったが、
なんとかキリマンジャロの雄姿をカメラに収めた。
モシに来た意味がこれでついた。
普段は飲まないコーヒーだが、
有名なキリマンジャロコーヒーと耳にすれば
飲んでみようかな?と心が騒ぐ。
砂糖5杯に、ミルクを並々注いで口にした。
甘さの中に、ほんのりとコーヒーのコク。
ちょうど、雲に隠れたキリマンジャロのように
控えめな味を楽しんだわけだ。
ダラダラに乗って
さて、今日は空白の1日。
さっさと次の街へ移動したかったのだが、
あいにくバスのチケットが完売ということで、
もう1泊を余儀なくされた。
このまま宿にいても退屈なので、
ちょっと冒険に出かけることにした。
「ダラダラ」と呼ばれる乗合バスで、
キリマンジャロの麓にある「マラング・ムトニ」を目指す。
しかし、ダラダラって冴えない名前だ…。
ダラダラ走るからこう呼ばれているのか、
ダラダラ待つからなのか?
当然ながらスワヒリ語なので日本語とは関係がないのだが(笑
冴えない名前といえば、
マダガスカルの「プスプス」も負けてはいない。
こいつは人力車で歩くよりも遅い…。まさにプスプス(笑
ダラダラと出発を待ち、ダラダラと走り始めた。
モシ→マラング・ムトニは、およそ40km(片道約1時間)で、
運賃は1500シリング(約120円)だった。
ゲートを目指す
マラング・ムトニは小さな町だった。
ダラダラから降りると、猛然と客引きが押し寄せてきた。
ちっ、こいつらはダラダラじゃねぇな。
コンニチワ、ドコイクノ、トザン?
どうしてもタンザニア人が好きになれないので、
彼らの日本語を聞くと無性にイライラしてしまう…。
目を逸らし、口を結び、早足でその場を去った。
せめて道を聞きたかったけど、プライドが許さなかった。
小さな看板を頼りに山道を歩いた。
向かう先は「キリマンジャロ国立公園」の入口。
公園内に入るには700ドル(?)近いお金がかかるらしい。
だったらゲートまで行って、そこで記念撮影だけで充分だ。
迷いながら山を抜け、やっとこさ幹線道路に出た。
道行く人に尋ねると、まっすぐこの道を上っていけば
国立公園の入口、「マラング・ゲート」だという。
ただし、5kmはあるらしいが…。
お金はないけど、体力と時間はある。
歩こうじゃないの。
雲にすっぽりと隠れてしまった
“あるべき”キリマンジャロを見据えながら
1時間、黙々と歩きつづけた。
ゲートはとても小さかった。
そこにはたくさんのガイドもどきがたむろしていて
変な日本語で周囲を固めてくる。
ノー、ノー、
ハエを追い払うように手を振り回し、
逃げるようにその場を去った。
隙を見て1枚だけ記念撮影をしたけど、
もう気分は最悪だった…。
滝を探しに
このまま帰るのも癪だし、
キリマンジャロが見えないのなら、
その雪解け水が流れ込む滝を見に行こう。
ガイドブックもないので、
ここはドラクエ流に「話す」のコマンドを使うしかない。
女性と子どもを中心に聞き込みをつづけた。
「ムバヘにあるよ」
この情報を信じムバヘの集落を訪れた。
とても小さな集落で、
ぽつんぽつんと申し訳程度に家が建っていた。
そのほとんどがサトウキビやトウモロコシ畑で、
畑を掻き分けながら進んだ。
トトロで出てくるような風景。
ざわわ、ざわわとサトウキビが揺れ、
『フィールド・オブ・ドリームス』のように
トウモロコシ畑から葉っぱ少年が姿を現した!
自分の背丈よりも大きな葉っぱの束を頭に抱えていて、
後ろから見ると葉っぱお化け。
妖怪図鑑に乗っていてもおかしくないだろう。
葉っぱ少年に、「滝、滝が見たいんだ」と
英語とゼスチャーで思いを伝えると、
「サワサワ(了解)」と、誇らしげな顔を見せた。
葉っぱお化けの後を追いかけた。
絶対ひとりじゃ見つけたれなかっただろう、けもの道…。
畑を横切り、民家の庭(?)を通り抜け、
急な崖を下った。
「ポレポレ(ゆっくり)」と心配げに彼は様子を伺っている。
「大丈夫だよ」、サンダルを何度も滑らせながら川に出た。
少年時代
あ、滝の音が聞こえる!
川に沿って50mほど歩くと滝があり、
たくさんの子どもたちが遊んでいた。
「ジャンボー、マンボー」
大きな声でコンニチワを言い、
彼らと一緒にはしゃぎ、踊り、歌った。
キリマンジャーロ、キリマンジャーロ♪と
手拍子で彼らは歌う。それを真似る。
カメレオンを見つけては、色を変えさせたり
泳がせてみたり。
コーヒーの実を割ってみたり、
飼っている牛を見せてもらったり。
いいね、こうゆう“少年時代”(by井上陽水)。
マイナスイオンと子どもたちに癒され、
ちょっとだけタンザニアが好きになった。
そういえば、ラオスでもこんなシーンがあったな。
子どもたちと滝すべりで遊んだあの夏。
最近はよくこの旅の思い出を振り返る。
きっと旅の終わりが
もうすぐそこまで来ているのだろう。
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