ホテル・ルワンダ

「えぇ、話が違うじゃん!!
ったく、カンベンしてよ…」

20日の夕方からこの物語ははじまる。
ウガンダの首都カンパラから
ルワンダを目指そうとバス会社のオフィスを訪れた。

 

ウガンダ脱出

「カンパラコーチ」という大手バス会社で、
ケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダ、スーダンを結ぶ。
ケニアからウガンダへの移動でこのバスを利用したのだが、
乗り心地が最高! すっかりリピーターになってしまった。

カンパラ(ウガンダ)に着いた際、
次のルワンダ行きを予約しようとしたのだが、
「大丈夫だよ、当日に来れば乗れるから」
と、その言葉を鵜呑みしてしまったのがいけなかった。

「えぇ、話が違うじゃん!!
ったく、カンベンしてよ…」

バスは満席。しかも5日後まで埋まっているという…。
カンパラに嫌気がさしてるし、
5日も待つなんて悠長な時間はない。

「どっか、別の会社教えてよ!」
天国から地獄へと、ここから旅は転落し始めた。
紹介されたのはローカルバス。
カンパラから「カバレ」へ行けば
ルワンダ行きのバスが頻発しているという。
国境の町カバレかぁ、行ってみるか。

 

目的地はカバレ

 

もう少し情報を集めればよかったと、
あとになってから後悔した。
パソコンを開いてから気がついたのだが、
実はルワンダ行きの国際バスがもう1社あった。
ことを急いだために、
こんなにも辛く長い移動になるとは…。

出発は20時、そう窓口で言われた。
「今夜出られるんだ、じゃあ乗ります」
チケットは40000シリング(約2200円)。
本来乗る予定だったカンパラコーチが
1500円でルワンダの首都キガリまでダイレクトなのに、
途中のカバレまでで1.5倍の料金?
腑に落ちねぇ…(←ウガンダ来てからこればっか)

渋々お金を払い、ほぼウガンダシリングを遣い切った。
最後の晩餐で贅沢しようと思ったのに…。

大急ぎで身支度を整え、宿をチェックアウト。
夕食はポテトで我慢し、ターミナルへ向かった。
「出発は20時」、この言葉を鵜呑みして…。
待てど暮らせど、バスは来やしねぇ。
しびれを切らせて窓口に向かった。

「まぁ、待て待て」
ずっと待ってるよ!もう22時だよ!!
「迷わず待てよ、そのうち来るさ」
って、ウガンダの猪木か…。

 

待ちぼうけ

23時、3時間遅れでバスが到着した。
堰を切ったよう人がなだれ込む!
おいおい、自由席か!?
こりゃ負けられない闘いだ、
燃える闘魂に火がついた。
おしくら饅頭状態で、乗車口にたどり着くもひと言、
「君、バスが違うよ」

ええぇ…!?
まさかのオフサイド。
行き先は同じカバレだが、このバスは1号車で
チケットには“3号車”と書かれていた。
そう、次の次。
いつ来るかわからないバスをもう2台待つのだ。

1時間後、1号車は出発し、かわりに2号車が到着した。
目の前には先程と同じ騒動が繰り返されている。
勝負は次だ!
軽く屈伸をして戦闘準備に取り掛かった。
30分後、念願の3号車が姿を現した。

行けぇぇぇぇぇ!! 突撃開始。
足の速さには自信があるので、
身体能力に長けるウガンダ人をも掻き分け、
5着でゴールした。

車内は狭く、2列+3列の5人がけ。
2列側の窓際を確保し、
網棚に荷物をくくりつけて出発を待った。
乗れないじゃないか!と大声でまくし立てる男、
トランクに入りきらない荷物を蹴って押し込む男、
車内の通路も人と荷物で溢れた。

 

過ぎ行くカバレ

出発は26時…。
6時間も待った挙句にこの地獄絵図。
天国から地獄へ―、
最悪の上の言葉を探したくなるほど、辛いバスだった。
出発前は人でむせ返り、暑くて暑くてたまらなかったが、
朝方には寒さに震えあがった…。
バスがおんぼろで、窓が閉まりきらない!
何度閉めても振動で勝手にオープン。
うん、まったく嬉しくない半自動窓…。
隙間風が吹き込み、持っている防寒具を総動員しても
奥歯がガタガタと鳴った。

眠れないよぉ(泣)
隣の席にはお母さんに抱っこされて眠っている子ども。
そっとその間に肩を入れ、暖をとった。
子どもの体温はあったかい。

まんじりともせず、朝を迎えた。
窓から朝日が差し込むと、寒さも和らぎ
ようやく眠りにつくことができた。
次に気がつくと、ひどく道が悪かった。

ここどだろう?
カバレ、カバレと連呼すると
「もう、過ぎたよ」と冷静なひと言。
しまった、寝過ごした!
急いでバスを降りようとするも
通路は人と荷物で埋まり、
アスレチック状態!!
降りたい、降りたいと叫びながら、
手すりに体重をかけて障害物をジャンプし、運転席へと急ぐ。

聞こえないのか、英語がわからないのか
どんどん走っていくバス、
たのむよ、停まってよー!!
何もない道でポツンと降ろされた。

 

カローラに乗って

 

とぼとぼと元来た道を戻る。
すると1台の自転車タクシーが通りかかった。
乗せてくれ!
まだ少年だったが英語が堪能で、
「ルワンダへ行きたい」と告げると、
バス乗り場まで乗せていってくれた。

途中でチェーンが外れ、ブレーキパッドが壊れ、
それでも彼は笑いながら1本道を行く。
たくましいな、ウガンダ人は。

 

今日は日曜日、バスはなかった。
少年とは違い、たくましくない日本人はうろたえた。
すると、怪しげな人物が近づいてきた。

「ルワンダへ行きたいか?」
(ウルトラクイズかっ!)

もちろんYES!! 今日も登場、渡りに舟。
乗り合いタクシーがあるからついて来いという。
その後を追うと、古びれた緑のカローラが1台。
中を覗くと、なんと後部座席に7人も人が!!

「5000シリング(約250円)」
ちょっと高いが、決まって彼らはこう言う。
「今はクリスマスだから」
クリスマスだ、年末だと、
かこつけて値上げするのは日本も世界も一緒。
もちろん選択の余地がないから乗るけどさ。

前に4人、後ろに7人…
計11人を詰め込んだカローラは走り出した。
運転手は子ども抱えながら
器用にギアチェンジをする。

途中の検問でも
「いやぁ、たくさん詰め込みましたねぇ」
とでも感心してるかのようなポリス。
まったくウガンダって国は腑に落ちねぇ。

 

首都キガリ

正午に国境をくぐり、
32ヶ国目「ルワンダ」に到着した。
ビザ代は60ドルで、1ヶ月間のシングルビザ。

国境に首都キガリ行きのバスが待っていたので
そいつに乗り込む。時計の針を1時間遅らせた。
2時間後、キガリの街に降り立ち、
2時間くらい街を彷徨って安宿を見つけた。
あいにく地図もガイドブックも持ち合わせていないもので…。

『ホテル・ルワンダ』ではなかったが、
ようやく救われた気がした。
さて、帰りのチケットを予約しに行かなければ。
もう、こんな目に遭うのはゴメンだ。

 

旅のカケラ/slideshow

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