エチオピアの旅は、
その大半をバスの中で過ごしている。
もう何度目だろうか?
こうやって月に照らされながら、
早朝のバスステーションへと向かうのは。
アルバミンチ→ジンカ
本日の移動は、アルバミンチ→ジンカ。
運賃は50ブル(約500円)で、
移動時間は約8時間である。
交通の要所である「コンソ」を経由するためか
人は順調に集まり、
定刻前の午前5時25分にバスは動き出した。
さて、「ジンカ」という町に向かうわけだが、
グレート・リフト・バレー沿いに広がる南部エチオピアの
オモ川流域には、未知の世界と大自然が
手つかずのまま残っている。
“人類発祥の地”と言われるこの地域には、
多くの民族が住み、民俗学的にも言語学上でも宝の山である。
豊かなモザイク文化
エチオピアは実に80以上の民族が
それぞれ異なる言語を有し、多様な文化を誇っている国。
かの偉大な歴史家コンティ・ロッシニが
「エチオピアは豊かなモザイク文化である」
称したように、
少数民族との出会いを楽しみにしてきた。
中でも、今なお独自の風習・文化や儀式を保ち続けている
「ムルシ族」に会うことを最大の目的としてきた。
ムルシ族は一目見るだけですぐにそれとわかる。
ムルシ族の女性は、下唇に穴を開けて
その穴に皿のような素焼きの土器をはめることで有名。
また、耳にも小型の皿のような土器をはめている。
見た目にはとても“痛そう”な民族である…。
デンプシーロール
バスは順調に飛ばした。
2時間後にはコンソに着き、
乗客を乗せ変えて、さらに加速した。
悪路もなんのその、
最後部に座ったため、下からの突き上げを
何度も食らい、面白いくらいにジャンプした。
富士急ハイランドにぜひ取り入れてみらいたい、
“ジャンピング・バス”である(笑
上下左右に振られ、身体はかくはん寸前…。
こんなときほど、揺れに身を任せてみるがいい。
8の字を描くように、身体は振り子と化して、
『はじめの一歩』でいうデンプシーロールの体勢!
三半規管も麻痺するほど宇宙遊泳を繰り返するため、
気分がハイになって、さらには眠気を誘う。
そうだな、ちょうど目覚まし後の状態?
眠るか、眠らないかの境目を
フワフワできるのが心地いい。
結局、8時間もの間、この状況を楽しんでいた。
ジンカに着いたのは午後2時だった。
日差しはきつく、土っぽい風が吹いていた。
ムルシ村への道
明日、土曜日は
付近の民族が集まるマーケットが開催されるため、
ホテルはどこも予約で埋まっていた。
そこで地元の少年に案内してもらい
町はずれの静かな宿をなんとか確保。
とりあえず荷物を置いて、遅めの昼食を摂り、
バスで一緒になった欧米人カップルの宿を訪ねた。
念願であるムルシ族に会うため、
ここは確実性をとって、彼らの村を直接訪問したい。
そこで、欧米人カップルと手を組んで、
車とガイドを手配しようというわけだ。
日本人だけでツアーを組むのも悪くないが、
どうしても日本人は甘く見られる…。
たとえば、法外な料金を請求されたり、
中途半端なツアーを組まれたりすることが多々ある。
そこで欧米人。彼らは権利を主張し、
そして一歩も引かない。
文句もビシっと言える!
なにより英語が堪能だから、
いざというときの交渉力が頼もしい。
ムルシ村訪問は明後日に決まった。
車、ガイド、国立公園入場料などをすべて含めて
ひとり頭457ブル(約4600円)。
けっして安い金額ではないが、
夢を叶えることを思えば、悪くない買い物だ。
エチオピア最後のハイライトは、
きっと、冒険と浪漫に満ちている。
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