カノンを奏でたくなった、
そんな気分♪
小さな村に降り立った
「ティヤ、ティヤ!」
バスの乗客に揺り起こされた。
あ、あぁ、降りますっ!!
ブロロロロ~
バスは黒煙を吐きながら
走り去っていった。
とても静かな、小さな村に降り立った。
実は昨夜から体調を崩し、
どうも身体が熱っぽい…。
何度も寝返りを打っては
悪寒と関節の痛みに、浅い眠りを繰り返した。
午前6時起床。
窓の外は快晴だった♪
眠気覚ましのシャワーを浴びながら、
観光に出かけるかどうか、迷っていた。
キュッと蛇口を締め、
タオルで頭を拭きながら
決意を固めた。
よし、行こう!
ティヤ遺跡
ここアディス・アベバからおよそ90km。
世界遺産にも登録されている遺跡がある。
「ティヤ遺跡」
ここはグラゲ族の村で、
エチオピア人でもティヤがどこにあるか
知らないくらい知名度の低い遺跡である。
なのになぜか世界遺産に指定されていて、
墓石群が残っている。
あまり魅力的じゃない遺跡のようなので
ひとりで出かけることにした。
これは12世紀頃に作られた墓石で、
グラゲ族とシダモ族の一部の墓だった
といわれている。
約36基あり、表面には剣や枕が彫刻されている。
剣は男性の墓だけに刻まれていて、
死ぬまでに殺した人数と同数の剣が彫られている。
ティヤの村から遺跡までは1本道だった。
国際学生証
時計を見ると午前10時。
ちょうど2時間バスに揺られていたか。
滅多に観光客など来ないのだろう。
早速村の子どもたちが集まってきた。
写真、写真!
裾をひっぱり、催促する。
えぇ、でも撮ったらお金せびるでしょ?
ノー、ノー、子どもたちは首を横に振った。
パシャ、パシャとシャッターを切る。
次はあたし、次はぼく、と
ポーズを変え、場所を変えてねだった。
キリがなかったので、
「戻ってくるから、遊んで待ってな」
そういい残し、遺跡の入口をくぐった。
スタッフらしき人物が1人近づいてきた。
入場料は50ブル(約500円)だという。
ちょっと高いなぁ…。
シリアで作った偽の国際学生証を掲げ、
ディスカウントを試みた。
この“ユネスコ”マークが目に入らぬか!
ははぁ、恐れ入りました(スタッフ)
って、水戸黄門みたいなことが起こった(笑
「なんだい、君はユネスコの学生かい?」
YES、胸を張って答えたね。
「OK、じゃあタダだ」
え、いいんすか!?
ちょっとだけ胸が痛んだ。
チップとして20ブル(約200円)を
手渡し、柵の鍵を開けてもらった。
貧素な遺跡
うわぁ!?
しょっぼい(笑
笑っちゃうくらい貧素な遺跡だった。
がっかり世界遺産ランキングがあったら
間違いなく優勝候補だ☆
でも、素朴でこういうのは好きだ。
もちろん貸切。
気持ちいい秋空と、昨夜の雨でしめった草原。
遠くで牛と山羊が遊んでいた。
そういえば悪かった体調もすっかり元通り!
カサカサと草を踏みしめる音だけが響いていた。
ごきげんだった☆
なぜか、カノンを奏でたい気分だった♪
(もちろん無理だけど)
小一時間ほど遺跡をうろついて、ゲートを後にした。
先ほどの子どもたちが待ち構えていた。
「よし、よし、
約束どおりいっぱい撮るよ」
笑顔でバスに乗り込んだ
夢中になっていると、
遠くにバスのクラクションが聞こえた。
子どもたちを振り切り、一本道を駆けた。
というのも、こんな田舎じゃ
いつバスが来るかわかったもんじゃない。
千載一遇のチャンス!
このバスを逃してなるものか。
アディス、アディス!
行き先を連呼して大きく手を振った。
早くおいで!
バスボーイが扉から身体を乗り出して
手招きする。
はぁ、はぁ、セーフ(笑
笑顔でバスに乗り込んだ。
宿に戻るとまだ夕方前だった。
ベッドに横になった瞬間に
昨夜の体調不良が戻ってきた。
ウルトラマンのカラータイマーと同じ。
これが限界だったようだ。
人の集中力はスゴイと思う。
観光に出かけた数時間だけ
嘘のように身体は元気だった。
気を張っていると、
熱もダルさも忘れてしまうようだ。
ランナーズハイならぬ、
ツーリストハイってこと?
今日の小さな冒険を回想しながら
部屋の天井を眺めつづけた。
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