カイロ、昼下がり、生ぬるい水。
ホブスと呼ばれる薄焼きパンに、
「一番安いのを!」と指定して購入したチーズを
挟んでは、口に押し込み、水で流し込む。
どうも気分が乗らない
薄暗いドミトリーにひとり、
読みかけの本をめくりながら、
こうして怠惰な1日を過ごしている。
腕時計を見るたびに
もうこんな時間か…、と
じりじり心を焦がしたが、
何かをする気力が生まれてこない。
昨日のピラミッド観光もそうだったが、
どうも気分が乗らないというか、
ひどく身体が疲れている。
眠れば眠るほど、身体はどんどん重くなり、
まるで鉛のよう。
頭もぼーっとしたまま焦点が定まらない感じ。
昨夜見た夢や、いつのものかわかならい夢が
どろんと浮かび上がっては、
つづきを想像すると、頭の中は真っ白になった。
体調はいいのに、心のバランスがよろしくないようだ。
しぼんだ風船のよう
今日はもう何も起こらない、
そう踏んで、昼下がりに日記を書き始めた。
とりたてて書く内容がなく、
着地点も見えないモヤモヤな日記を…。
この症状は日本でも経験している。
とりわけ日曜日に多く、
しぼんだ風船のように、
ひねもすベッドに寝転んでは、
チャンネルをはしご。
別に観たくもないゴルフや3流サスペンスを
だらしなく眺めていた。
いつしか傾きはじめた太陽に焦りを感じ、
ぶらりと外に出てみるものの、
行くあてがなく、
コーラを1本買って帰るのが
関の山だったりする。
せかせかと生きている人は、
こうした予定のない1日の過ごし方が
下手なのだろう。
この旅は毎日のように移動や観光と
予定がギッシリ。
だから今日みたいにポッカリと空いた時間を
持て余してしまい、自己嫌悪に陥るのだ。
仲間集め
ここカイロでは、スーダンとエチオピアの
ビザを取得しなければならないのだが、
今はラマダン明けの休みに入ってしまい、
大使館は休館中…。
ならばと、砂漠のオアシスへ向かう
ツアーを組もうとするも
人数が集められないまま2日が経過、
頓挫してしまっている。
身動きとれず…。
「のんびりすればいいじゃん」
そう思うのだが、
ある程度決まった予定の中でしか
落ちつけない、羽を伸ばせない、小心者。
大海よりも井の中がお似合いなのだ。
はぁ…溜息。
って書いてたら、天からの思し召しが!?
「明日、砂漠ツアーに行きたいんですけど…」
えっ、マジ!
しかも3人も☆
ありがとう、ありがとう×100
今日に意味がついた。
未来が動き出した。
ツイてるときはツイてるもの。
さっきまでの腑抜けた自分にバイバイ。
部屋でニヤケながら日記を書いていると
韓国人のチェ・ソンが呼びにきた。
「カジュサン、サバク…」
彼に連れられ、フロントに行くと
そこにはダハブで会った顔が。
「砂漠ツアーを募集してるって聞いて…」
はい、してます、してます。
ありがとう×1000
ツアー参加者は合計7人。
目標の定員に達した。
これで車とガイドのチャーター代は、
1人あたり3200円になり、
明日の出発が決定した。
白砂漠、黒砂漠を巡る1泊2日の砂漠オアシスツアー。
4駆で砂丘を越え、テントに宿泊。
満天の星空を眺めながら、
旅路に思いを巡らせようか。
こうして思わぬカタチで
日記の着地点を迎えた。
未来は気まぐれだから面白い。
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