深夜23時、バスに乗り込んだ。
ダハブから約100km西にある聖地を目指す。
「シナイ山」
シナイ山
旧約聖書には、この地でモーゼが神から
十戒を授かったと記されている。
シナイ山は標高2285m、
御来光を拝むため、
こんな深夜に登山をしようとういわけだ。
この旅の最大のハイライトである“アフリカ”。
その幕開けの儀式として、気持ちを引き締めたい。
世界遺産にも登録されている
「聖カトリーナ修道院」の麓にバスは停まった。
山頂までは、ラクダ道と呼ばれる真っ暗な1本道を
黙々と3時間歩くことになる。
無数のトーチが揺れていた
午前2時、ヘッドライトをON。
多くの巡礼者に紛れながら1歩ずつ慎重に足を運んだ。
「キャメル?キャメル?」
途中、しきりにラクダ引きが声をかけてくるが、
その声を振り切って、そぞろ歩く。
空を仰ぐと、そこには満天の星。
「うわぁ…」
口をあんぐりと開けて、
圧倒的な星空によろめいた。
吸い込まれそう…こんな状態を言うんだろうな。
振り返れば巡礼者の無数のトーチが揺れていた。
その光景はとても厳かで、
まるで霊界へと導かれるようで、
自分の意識がぼぉっとしてきた。
なんだか不思議な夜だ。
シナイ山は緩やかな坂道だったが、
足元がほとんど見えないため
何度も石につまずき、
また突如首元に感じるラクダの鼻息に驚かされた。
終盤は石段が続いた。
約800段を踏み外さないように
山頂を目指す。
あまりの暗さに一緒に歩いていた友も見失った。
夜明けは近い
午前4時半、
三位一体教会を通り過ぎ、山頂に辿り付いた。
御来光まではあと1時間ほどだという。
フリースまで着込んできたものの
思った以上に風が冷たく、身体の芯から凍える。
ブランケットがわりの布をきつめに巻き、
身体を丸めながら、じっと日の出を待った。
赤絵の具を落としたように
空が滲みはじめた。夜明けは近い。
山際がしだいにくっきりと姿を現し、
低いどよめきとともに太陽が顔を出した。
あっ…、御来光…(笑
ありがたかった。
芯まで冷えた身体に
再び暖かな熱が通い始めるようで、
毎日昇る太陽なのに、
シチュエーションや気持ちによって
こんなにもありがたいものに感じるとは。
A Happy New Day♪
毎日こんな気分なら、
1日の大切さが違ってくるだろうね。
聖カトリーナ修道院
下山は惰性で進む足に任せ、一気に麓まで下り、。
聖カトリーナ修道院に立ち寄った。
周囲を防壁で囲われた修道院で、
キリスト教の一派である正教会の修道院としては最古のもの。
バシリカ式の主聖堂が中心にあり、
設立当時から残る絵画やイコンが所蔵されていた。
とても静かな場所で夢の中にいるようだった。
額の汗を拭いながら、大きく深呼吸をし、
神聖な空気を吸い込んだ。
疲れた身体をバスに投げ込み、
出発したこともわからないほど
熟睡してしまった。
海に潜り、山に登り、
大自然に誘われているエジプトの旅。
アフリカの大地は、五感を刺激する。
心のままに、あるがままに。
旅のはじまりと、おわりを
この大地で受け止めたい。
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