こけし旅’19(福島編②)鯖湖こけし

 

弥次郎こけし村を後にし、
次に向かったのは「飯坂温泉」。

何気なく見ていたこけしの本で見つけた
幻のこけし「鯖湖こけし」を探しにいく。

 

鯖湖こけしとは、土湯系こけしに分類されていて、
福島県の飯坂温泉にある鯖湖湯界隈で売られていたこけし。
太いロクロ模様と色使い、
UFOのような頭と胴体のバランスがなんとも美しい。

「鯖湖こけし」はどこで手に入るのか??
出発前に飯坂温泉観光協会に電話してみたところ、
渡辺幸典さんの工房「飯坂 山根屋」があると教えてもらった。
そこで渡辺幸典工人の自宅に電話をし、
鯖湖こけしが欲しい旨を伝えた。

すると、今はほとんど作っていないとの話だったが、
少しなら材料があるから、と、作っておいてくれることになった。
そして今日、できあがったこけしを見せてもらいに行く。

飯坂温泉は川沿いにある立派な温泉地で、
銀山温泉に雰囲気が似ていた。
2世紀に日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の病を治癒したとの
伝説も伝わる長い歴史を持つ温泉で、
松尾芭蕉は奥の細道で飯坂温泉に泊った記録を残し、
正岡子規や与謝野晶子といった歌人の他、
ヘレンケラーも二度訪れたことのある名湯だそうだ。

工房を発見し、そっと扉を開けてみると
渡辺工人が優しい笑顔で迎え入れてくれた。
早速作品を見せてもらうことになり、
7体ほどの鯖湖こけしとご対面。
5寸が1つと、残りは7寸や8寸だった。

胴体は赤と黄色の縞々で、
たしかに頭はUFOのように平べったい形をしていた。
レトロでとても好みのデザインだった。
小ぶりの5寸を購入させてもらうことにした。

 

その中に1つだけ、デザインが違うものが混じっていた。
胴にアヤメが描かれ、艶やかな表情に気品が漂っている。
細身の胴と大振りの頭のバランスの妙も良い。
実はこれ、祖母キンの描いた古型を研究して復元したこけし。

今ではキンの作品はほとんど残っておらず、
渡辺工人は見つけるたびに、高額な金額でも買い戻しているそうだ。
実物も2体見せてくれた。
1体100万でも売れないという貴重な作品だとか。

そんなありがたい作品を見せてもらい、
鯖湖こけしの歴史をひとしきり教えてもらったので
キンの復元こけしも欲しくなり、
貴重な最後の1体を譲ってもらった。

こけしは1体1体に歴史があり、
そして工人の想いが詰まっているから面白い。
好みのデザインや表情だけでなく、
ルーツを知って手に入れるとさらなる宝物になる。

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