鯖湖こけし(渡辺幸典工人)

 

土湯系こけしに分類されていている「鯖湖こけし」。
福島県の飯坂温泉にある鯖湖湯界隈で売られていたこけしで、
太いロクロ模様と色使い、
UFOのような頭と胴体のバランスがなんとも美しい。

いまでは幻のこけしとなっているが、
どこで手に入るのか?を
飯坂温泉観光協会に聞いてみたところ、
渡辺幸典さんの工房「飯坂 山根屋」があると教えてもらった。
そこで渡辺幸典工人の自宅に電話をし、
鯖湖こけしが欲しい旨を伝えた。

飯坂温泉は川沿いにある立派な温泉地で、
銀山温泉に雰囲気が似ていた。
2世紀に日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の病を治癒したとの
伝説も伝わる長い歴史を持つ温泉で、
松尾芭蕉は奥の細道で飯坂温泉に泊った記録を残し、
正岡子規や与謝野晶子といった歌人の他、
ヘレンケラーも二度訪れたことのある名湯だそうだ。

工房に伺うと、数体のこけしを用意してくれていた。
胴体は赤と黄色の縞々で、
たしかに頭はUFOのように平べったい形をしていた。
レトロでとても好みのデザインだった。
小ぶりの5寸を購入させてもらうことにした。

祖母キンの描いた古型を研究して
復元したというこけしもあった。
胴にアヤメが描かれ、
艶やかな表情に気品が漂っている。

今ではキンの作品はほとんど残っておらず、
渡辺工人は、見つけるたびに
高額な金額でも買い戻しているそうだ。

今回、貴重な最後の1体を譲ってもらった。

こけしは1体1体に歴史があり、
そして工人の想いが詰まっているから面白い。
好みのデザインや表情だけでなく、
ルーツを知って手に入れるとさらなる宝物になる。

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