南アフリカ「キンバリー」、
オレンジ川の中流地点に位置し、
南アフリカのゴールドラッシュ、
ダイヤモンドラッシュ時に栄えた街である。
ビッグホール
かつての黄金時代の風景が残されているという
『ビッグホール』へ向かった。
ここはかつてのダイヤモンド採掘所で、
深さ約400m、幅1.6kmという
人の手で掘った世界最大の穴、
ビッグホールはぜひ見てみたい。
当時の街を再現したテーマパークになっていて
ミュージアムにはダイヤモンド採掘の様子が
分かりやすく展示されている。
“南アフリカの星”と呼ばれる
およそ85カラットのダイヤモンドも輝いていた。
夢の跡…
勝手な先入観ながら、アフリカとは思えないほど
レベルが高いミュージアムで、日本のものと遜色はない。
入場料も日本並の70ランド(約700円)ではあったが…。
切りたった崖に突き出た展望台。
そこを見下ろすと街をえぐるように巨大な穴があった。
Oh、ビッグホール!!
翡翠色した水を湛えていて、ダムと見まごうほどの迫力。
露天掘りという、坑道は作らずに
ただひたすら下に下に掘り進めてあり、
ここ掘れワンワン、ポチもびっくりな大穴だ。
ここはまさに、夢の跡…。
郷愁に似た寂しさ
吹き付ける風は荒涼としていて、
テーマパークにもほとんど人はいない。
観光客を運ぶトラムも停まったままで、
あれほど栄華を極めた街のなれ果てを物語るようだった。
「猛き者もいつかは滅びる、ひとえに風の前の塵に同じ」
平家物語の下りを詠みたくなるね。
夕暮れの公園で、ブランコが風で揺れていたり、
砂場に子どもたちの夢の跡が残っていたり…。
そんな光景を目にしたときと同じ気持ち。
どこから来たのか、郷愁に似た寂しさを抱えながら
ビッグホールを後にした。
次の街はアピントン
次に向かうは「アピントン」。
残念ながら特筆すべきことがない街で
中継地点として1泊刻むだけ。
タクシーランクと呼ばれる乗合ワゴンの停留所に行き、
アピントン行きのチケットを購入したが
他に乗客はだ~れもいない…。
つむじ風がゴミを巻き上げ、もの悲しさを演出していた。
ここも、夢の跡かい…!?
乗合ワゴンというのは、
満席にならないと出発しない交通機関で、
『あいのり』みたいにメンバー補充しながら進むほど
効率はよくない。
元は取らなきゃ!という商売根性が座っているので
何時間でも客が来るまで待つ。
忠犬ハチ公もびっくりの忍耐力。
だ~~~れも来ないねぇ…。
2時間が経過した。
コーラをすすり、茶うけのクッキーをかじる。
ホ~ントに今日出るの~?
また2時間が経過した…。
ウサギも転げない、待ちぼうけ。
結局5時間近く待ったが、
集まった乗客はたったの3人…。
それでも運転手が「行くぞ!」と車に乗り込んできた。
お、出陣!?
碇を上げろ、帆を張れ、舵を取れ、北北西に進め!
午後5時、アピントンに向けてワゴンは駆け出した。
ボツワナまでつづくカラハリ砂漠を車窓から眺めながら
たった3人の広々ワゴン。
道はとにかくまっすぐで、スピードメーターに目をやると
時速150km!!を指していた。
アピントンまで約400km、行け、行けっ!!
■キンバリー→アピントン
(所要時間:4時間/運賃150ランド ※約1500円)
影絵になるんだね
どこまでもつづくカラハリ砂漠と、空のキャンパス。
好き勝手に散らばった雲は、
夕暮れが近づくにつれ、アプリコット色に変わっていく。
日が沈むと山際が輝き、
空にこがね色のグラデーションを作り出す。
そして、すべてのものがシルエットになっていく
この瞬間が好きだ。
影絵を見てるみたいで、世界が平面になった。
影とダイヤモンド
永遠の輝きも、太陽が沈めば影絵になるんだね。
コメントを残す